【心肺停止から蘇り日記】自由にトイレに行けない入院生活でのプレッシャー

2020年05月09日 10時00分

【50代バツイチ女性医療ライター・心肺停止から蘇り日記】50代独身(バツイチ)の女性医療ライターが山手線内で心肺停止。周囲の助けで救急搬送され、一命を取り留めました。復帰までの入院生活を振り返ります。

 はじめての入院生活は4人部屋。もちろん保険適用内ですが、意外と広々&清潔でした。カーテンで仕切られ、プライバシーも割と守られています。ただ、問題は、病院脱出を試みた前科によりベッドに縛りつけられているってこと。そんな暇を持て余している私にとって、漏れ聞こえてくる会話は数少ない娯楽です。

 ある日、私の隣に新入りのおばあちゃん(94歳)がやってきました。急性期の病院は出入りが頻繁です。丁寧で腰が低い言葉遣いが好印象で、夜中に騒ぐこともなくほっとしていたのですが、唯一の欠点が発覚。1時間に3回はお手洗いに行くのです。

 病棟ではトイレに行くには看護師さんの同伴が必須。おばあちゃんはナースコールで看護師さんを呼ぶ度に「またトイレに行きたくなっちゃった。すいません。ごめんなさい。申し訳ない」と謝り倒します。カーテン越しの私でさえ涙がこぼれそうなせつないリピートです。

 呼ばれた看護師さんも回を重ねるごとに「えっ、さっき行ったばっかりですよね?」「行っても出なかったじゃないですか」と笑顔は曇りがち。しまいには「頻繁にトイレに行くと血圧が上がっちゃいますよ。オムツにしましょうか」と提案するものの、おばあちゃんは断固拒否。そこは譲れないプライドなんでしょう。

 ただでさえ慣れない入院生活の上に自由にトイレに行けないプレッシャー、毎回「おしっこ行きたいんです」と人様にお願いしなきゃいけない屈辱。これは私もストレスでしたから。ちなみにおばあちゃんはご家族が面会に来ている時はトイレに行きません。みんなが帰ると途端にナースコールを押して「すいません。ごめんなさいね。申し訳ない」が始まるのでした。

 ひとりの看護師さんは耐えきれず「もう謝らないでくださいね」と。カーテン越しで聞いていた私も「その通り!」と心の中で拍手を送っていると、おばあちゃんは「こんなに皆さんに迷惑かけるなら、早くお迎えにきてほしいもんだよ」とポツリ。すると「えっ? ご家族にですか? 誰にですか? 連絡しましょうか?」と看護師さんはマジボケ。そしたらしばしの沈黙の後「だから、死にたいんだよっ」とおばあちゃんは声を荒らげました。いやあお元気で何より!(医療ライター・熊本美加)