【心肺停止から蘇り日記】誰でも脱走したくなる入院生活

2020年05月02日 10時00分

【50代バツイチ女性医療ライター・心肺停止から蘇り日記】山手線内で心肺停止し、周囲の助けで救急搬送、何とか復活した50代独身(バツイチ)の女性医療ライター。何とか集中治療室から出ることはできたが…。

 初めての入院生活で想像以上に厳しかったのは病院のルール。自由気ままに生きていた私は束縛されるつらさを知りました。入院経験のある方なら強くうなずいてくれるはず。あまりのストレスで急性期病院では2回脱走を試みました!

 初犯は集中治療室から出て間もなくで記憶にございません。だからこそ本能で逃げたのでしょう。見舞いに来た親族を見送りつつ、車椅子でエレベーターに突進。「どうしても行かなきゃいけないところがある!」と必死で訴えていたようですが、羽交い締めにされて御用に。

 2回目は、寝間着の上にコートを羽織って、車椅子で堂々と病院の正面のタクシー乗り場へ。そこで警備員に「どこに行くんですか? 入院患者さんですよね?」と呼び止められ、あっけなくお縄に。その病院ではかつて一人だけ正面突破が自然すぎて脱走に成功した患者さんがいましたが、程なく家族に連行されたとか(笑い)。

 前科者になった私への監視体制は一層厳重になり、食事はナースステーションで取る羽目に。私以外にも注意人物と認定された数名のお仲間とともに、「つらいよね」と互いに目くばせしながら耐えました。

 さらにトイレはもちろん同じ階の自動販売機にもナースが一緒じゃないとNG。何より私を苦しめたのが固定ベルトの存在です。ベッドから落ちないように?脱走しないように?腰回りのベルトには磁石のカギをかけられます。これが苦しいなんてもんじゃない。寝返りは打てないし、外さなければどこにも行けやしない。いちいちナースコールを押さなければ身動きを取れない屈辱でさすがに憔悴です。

 あまりのやるせなさに、ベッドの周りのものを手当たり次第床に投げたり、バタバタと暴れたり抵抗をしてみたものの看護師さんに「どうかされましたか?」とクールにいなされ終了。心がボキボキ折れまくりました。

 そして夜になれば同室の患者さんたちが必ずざわつく時間がやってきます。「痛いっ」「やめてよ」「触らないでーーーっ」と怒号が響きます。「ばか野郎」「この野郎」「泥棒」と昼間は上品なおばあさまたちもアウトレイジ化。私はベッドでブルブルとおびえ、若い看護師はオドオドする中、キャリア組の看護師さんたちがやってきて「はいはい」「そうですね」とフツーに対応。経験こそがハートを強くするんですね。

(医療ライター・熊本美加)