【生き様に活かす死者の声】新型コロナで危惧すべきは葬儀崩壊! 火葬場も火葬時間も限定される

2020年04月21日 10時00分

【法医学者・佐藤喜宣の生き様に活かす死者の声】数多くの遺体と向き合ってきた法医学者(監察医)だからこその警鐘だ。杏林大学医学部名誉教授の佐藤喜宣氏(70)によると、新型コロナウイルスで危惧すべきは医療崩壊だけではないという。

 新型コロナウイルスによる「医療崩壊」が起きてしまった場合、その直後に来るであろう「葬儀崩壊」も想定しておく必要があります。

 3月29日に新型肺炎でご逝去された志村けんさん(70)は、病院から火葬場に直葬されたため、家族ですら入院してから一度もお顔を見られませんでした。通常ご遺体は死後24時間たってから火葬されますが、新型コロナウイルスによるご遺体は、気体も液体も通さない非透過性の納体袋で包み、棺も密閉するので、ご遺族は故人に触れることはできないからです。

 新型コロナウイルスが指定感染症になった当初は、重症急性呼吸器症候群(SARS)や結核同様の二類感染症相当の扱いでしたが、世界情勢からとてつもなく感染力が強いことがわかってきたので、厚生労働省はエボラ出血熱やペストと同様の一類感染症と同じ扱いとなる「24時間以内に火葬できる」と葬儀方針を変更しました。その上で“できる限り遺族の意向を尊重”としていますが、実際には「すぐに火葬すること」を推奨しています。そもそもお顔の部分が見えるようになっている納体袋は少なく、仮にご遺族がお顔を見て最期のお別れをするにしても完全防御体制が必要となるので、厳しいのが現状です。

 3月中旬、関東地域の病院でPCR検査中の方が亡くなられました。死因が新型コロナウイルスなのか不明のまま火葬が行われ、情報不足で感染防御体制が万全ではなかった葬儀スタッフ全員が2週間の自宅待機となりました。

 このようなとき、大手の場合はスタッフが多く通常業務が可能ですが、中小の葬儀社はそうはいきませんし、葬儀社内で感染者が出た場合、人手不足から葬儀崩壊が起こる可能性もあります。今のところ、ウイルスの活性時間も定かではないため、葬儀における湯灌(ゆかん)等も絶対に避けるべき行為です。それこそ病院内感染のように葬儀内感染の可能性が高まる危険性があります。

 当然、医療従事者同様、葬儀スタッフも感染防止のためのマスク、帽子、手袋、靴カバー、ガウンといった感染予防装具の在庫を、スタッフ分だけではなく、ご遺族分もキープしておく必要があります。ちなみに、かつて私の法医学教室では、年間400~500体を解剖していたので、1体につきスタッフ5~6人分、年間約3000着の感染予防装具を使用していました。

 新型コロナウイルスで亡くなられた方の場合は、火葬場も火葬時間も限定されています。東京23区は火葬場が9か所しかなく、そんな中で新型コロナウイルスによる葬儀崩壊が起こってしまったら、日本でもこの先「火葬場待ち」という状況も起こりえます。その時の選択肢として、遺体保全となる「エンバーミング」を視野に入れ、火葬を遅らせることも考えていく必要があるでしょう。 (構成=福山純生)

☆佐藤喜宣(さとう・よしのぶ)1949年、東京都生まれ。杏林大学医学部名誉教授。日本歯科大学、広島大学医学部客員教授。東京都と千葉県の児童相談所セカンドオピニオンも務めている。ドラマ「監察医 朝顔」の原作漫画の監修者でもある。