【生き様に活かす死者の声】「オウム坂本弁護士一家殺人事件」私の言葉を信じ遺体捜索 予測通りそのままの姿で発見

2020年04月14日 10時00分

【法医学者・佐藤喜宣の生き様に活かす死者の声】坂本弁護士一家殺人事件で犯人の自供から考えられた“ある予測”とは――。法医学者(監察医)で杏林大学医学部名誉教授の佐藤喜宣氏(70)が自らの貴重な経験について語ります。

 1989年11月4日に発生したオウム真理教による坂本堤弁護士一家殺人事件。事件発生から5年10か月後となった95年9月、長野県の山中で、龍彦ちゃん(当時1歳)捜索の陣頭指揮を執っていた検視官は、警察大学校で教鞭をとっていた時の私の教え子でした。

 龍彦ちゃんは体が小さいので、腐敗してわからないのではないかといった情報も錯綜する中、私は捜査本部に、自供に間違いがなければ高温多湿でバクテリアが発生する状況下ではないので、腐敗が起こることはない。龍彦ちゃんはそのままの状態で見つかりますと伝えていました。

 犯人の自供は11月の半ば、長野県の標高500メートル以上の湿地帯に穴を掘って埋めたという内容。季節、低温、空気に触れない湿地帯、標高が高いので温度は一定という状況下にご遺体が遺棄されたとすれば、腐敗とは逆となる屍蝋(しろう)化が起きていると考えていたからです。

 私の教え子は「自分の師匠が、絶対そのままの状態で見つかると言っているんだから信じて捜索しよう」と現場を鼓舞し、捜索から5日目、ついに龍彦ちゃんを発見しました。

「見つかりました。先生の言う通りでした」と連絡が来ました。龍彦ちゃんはそっくりそのまま屍蝋化した状態で見つかったのです。

 我々専門家は報道番組等からコメントを求められる立場でもあるのですが、間違った見立てをしてしまうと、現場の最前線で働いている警察官たちの捜査方針にも影響が出てしまう可能性もあります。

 不確かなことは言えません。責任は重いのです。

 (構成=福山純生)


☆佐藤喜宣(さとう・よしのぶ)1949年、東京都生まれ。杏林大学医学部名誉教授。日本歯科大学、広島大学医学部客員教授。東京都と千葉県の児童相談所セカンドオピニオンも務めている。ドラマ「監察医 朝顔」の原作漫画の監修者でもある。