【生き様に活かす死者の声】「オウム坂本弁護士一家殺人事件」自供通りであれば腐敗は起きない

2020年04月07日 10時00分

【法医学者・佐藤喜宣の生き様に活かす死者の声】1万体以上の検案、5000体以上の法医解剖を担当してきた杏林大学医学部名誉教授の佐藤喜宣氏(70)が、貴重な経験から生と死について考える当コーナー。今回は、坂本弁護士一家殺人事件を取り上げます。

 犯人がご遺体を遺棄した自供内容に「時期」と「場所」が特定された場合、その情報からご遺体の状態がどうなっているのか、ある程度わかります。

 オウム真理教問題に取り組んでいた坂本堤弁護士一家殺人事件の時がまさにそうでした。

 1989年11月4日に発生したこの凶悪事件。95年9月6日に弁護士は新潟県の山中、奥さんは富山県の林道脇で発見されたのですが、当時1歳だった龍彦ちゃんの捜索は難航していました。

 実行役だった岡崎一明死刑囚は、11月の半ば、長野県の標高500メートル以上の湿地帯に穴を掘って埋めたという内容の自供をしていました。

 自供に間違いがなければ、その環境では腐敗が起きることはありません。腐敗が起こるのは、ある程度の温度と湿度と空気の流れがある状況下で、バクテリアが発生する場合だからです。

 したがって低温、空気に触れない湿地帯、標高が高いため温度は一定という状況下に埋められたとすれば、屍蝋(しろう)化が起きていると予測できました。

 屍蝋化とは、端的に言えば、石蝋化したご遺体です。腐敗と真逆の進行となった時に起きる状態です。

 腐敗しやすい条件とは、一般に高温多湿でバクテリアが発生しやすい状況。加えて自家融解といって、死後に細胞自身が細胞を壊して有機物を無機物に変え、徐々に白骨化していきます。

 その真逆ということは、低温で水の中、あるいは土の中といった特殊な状況です。土といっても粘土質のところにご遺体があると、腐敗が止まって、生ハム状態となって熟成し、石蝋化していき、外表は石膏のような状態になっていきます。

 私は捜査本部からの問い合わせに、自供通りであれば、龍彦ちゃんは腐敗することなく、生前の姿のままの状態で見つかりますと伝えました。(次週に続く=構成・福山純生)

☆佐藤喜宣(さとう・よしのぶ)1949年、東京都生まれ。杏林大学医学部名誉教授。日本歯科大学、広島大学医学部客員教授。東京都と千葉県の児童相談所セカンドオピニオンも務めている。ドラマ「監察医 朝顔」の原作漫画の監修者でもある。