【産業医の独りごと】増加する「がんサバイバー」 仕事と治療を両立するには…

2020年01月30日 10時00分

 今週は治療と仕事の両立「両立支援」に関する2回目として「がん」について取り上げます。

 日本では毎年85万人の人ががんにかかり、その3割は勤労者であると言われています。つまり毎年30万人弱の働く人ががんに罹患することになります。一方で、診断や治療技術の向上で、がんは不治の病ではなくなっています。実際に平成28年の報告では、がん患者さんの62%が5年以上生存するとされており、「がんサバイバー」の方々は年々増えています。

 私はよく社員の方に「がんの治療は進んでいて、がんになっても当たり前に生活をし、当たり前に働いて長く過ごす時代になっていますよ」とお話ししています。がん患者さんの悩みを聞いてみると、症状そのものや副作用、後遺症の不安はもちろんですが、家族や周囲の人との関係、就労・経済的な負担、病院や医療職との信頼関係、今後の生きがいなど多岐にわたります。これらを支えるためには、患者さん個人だけの頑張りに任せるのではなく、家族や職場、ひいては地域などの包括的な支援が必要です。

 具体的な職場でできる支援としては治療を受けるための時間を捻出しやすい時間休が取れるような休暇制度を整えることや、病気について正しい知識を身につけるための研修、または社内外で相談できる窓口を創出することなどが挙げられます。たとえば、がんの中には放射線治療が有効なものがあり、放射線照射として1回の治療にかかる時間は5分程度ですが、それを何十回か続ける方式などが一般的です。そうした場合、全てを1日や半日単位の休暇制度で対応するのは無理がありますよね。前述したように時間休が取れれば、仕事にもスムーズに対応できますし、当事者の精神的な負担も減ると思われます。

 そのほかにも、例えば胃がん手術後の人は、一度に多くの量を食べられないので何回かに分けて補食する必要があったり、大腸がんの治療の一部には、排せつのケアが大切なケースもあります。

 つまり、食事や排せつ、または通勤時間の調整や過重労働の軽減を含め、職場がケアすべきことや支援できることはたくさんあると思います。がん患者さんは病院だけでなく、同僚やご近所さん、あるいは自分自身だったり、つまりは職場や日常に普通にいるんだと考えましょう。その人たちが元気に安心して働けるようにするのは、実は難しいことでもなんでもなく、当たり前のことなんですよね。

 (都内事業所勤務・A男)