新型コロナウイルス発生源“米中陰謀論”情報戦

2020年01月27日 16時25分

 日に日に感染者数が膨れ上がる新型コロナウイルスによる肺炎で、中国政府は海外への団体旅行を27日から停止させ、日本政府も発生地の湖北省武漢市の在留邦人に対し、希望者をチャーター機で帰国させる方針を示した。新型ウイルスを巡っては、欧米メディアから武漢のウイルス研究所由来との見方が報じられ始めた。米国による陰謀論も渦巻き、混乱は世界に広まっている。

 厚生労働省は26日、武漢市から旅行で日本を訪れた40代男性が新型コロナウイルスに感染し、肺炎を発症しているのを確認したと発表した。日本国内での感染確認はこれで4例目だ。

 中国での死者は上海市と河南省でも初めて確認され、国営メディアによると、中国本土での死者が56人、発症者は2036人になった。中国本土以外でも50人以上が感染している。

 中国当局は武漢市内で許可された車両以外の通行を禁じ、封じ込め作戦を展開している。だが、政府の専門家によるとウイルスの潜伏期間は約10日間で、1~14日間の幅がある。既に多くの市民が武漢から出ており、春節休みの時期とあって中国国内のみならず世界各国へと移動し、どこまで感染が拡大するかは読み切れない状況だ。

 世界に未知のウイルスの拡散が懸念される中、24日付の米紙「ワシントン・タイムズ」や複数の欧米メディアが、新型肺炎は武漢の「武漢病毒研究所」の由来である可能性を指摘している。

 これまでコロナウイルスの発生源について中国当局は不明としながらも患者が多く発生した武漢市内の海鮮市場とし、コウモリの持つコロナウイルスがなんらかの形で、ヘビに移り、変異したとの見方が有力だった。

 ところが、ヘビ説には世界中の研究者からウイルスの構造から異議が唱えられた。中国当局はウイルスのゲノム解析を終え、抗ウイルス薬の臨床試験に作業が移っているという。この種のウイルス対策での迅速な動きができるのも“事前に新型コロナウイルスの存在を把握していたからでは”とみられているのだ。

 武漢病毒研究所は中国における自然科学とハイテク総合研究の総本山である中国科学院の一部門とされる。2018年に開設され、表向きは感染症対策の研究を行うとされるが、多くの病原菌、ウイルスを扱い、軍用に転用される生物兵器の研究を行っていた可能性があると危惧されてきた。欧米メディアは研究所から何らかの形で新型コロナウイルスが漏れ、約30キロといわれる距離にある海鮮市場で広がった可能性を指摘した。

 一方「ワシントン――」でも伝えているが、新型コロナウイルスが発生した当初、中国内ではウイルスは米国がまき散らしたとの陰謀論が流布していた。
 折しも、米中は経済の覇権争いともいえる貿易戦争を繰り広げ、今月15日に第1段階の合意に達したばかり。習近平体制は疲弊した中国経済の立て直しを図ろうとしている矢先に新型コロナウイルスの発生で、大打撃を被っている。

 生物化学兵器の事情に詳しい関係者は「過去に世界中を恐怖に陥れたHIV(ヒト免疫不全ウイルス)、03年のSARS(重症急性呼吸器症候群)、中東で拡大したMERS(中東呼吸器症候群)、アフリカ発祥とされるエボラ出血熱など未知のウイルスが発生すると、米軍や軍産複合体が意図的にバラまいたとの説が出る。新型コロナウイルスは真偽不明ですが、ネット社会になって、なおさらその種の話が真実味を持つ時代になっている」と指摘する。

 今回のウイルスが武漢の研究所から漏れたものであれば、中国当局の大失態で、米陰謀論は自分たちの責任を回避したい思惑となる。一方、トランプ米大統領は新型コロナウイルス発生当初から楽観的な姿勢を崩していない。25日のツイッターでは「中国はウイルスが拡散しないよう一生懸命対応している。米国民を代表して、中国の努力と透明性に感謝する。うまくいくだろう」と書き込んでいるが…。