今週から何回かに分けて「両立支援」について触れたいと思います。最近では電車のポスターなどでもよく見るこの言葉。簡単にいうと病気の治療をしながら仕事も行うことを指します。今回はなぜこの言葉が今注目を集めているのかについてご説明するとともに、病気になっても働ける社会や文化をつくることの大切さについて伝えていければと思います。

 私たちの日常生活で、仕事と両立するための法律や仕組みがある程度成熟しているものには、「育児」や「介護」があります。産休や育休という言葉があるようにお子さんを育てるための制度は広く整っています。最近はお父さんが育休を取るケースも当たり前になりつつありますね。また、親やパートナーを介護するための仕組みも介護休暇を含め、会社によってはまだまだ発展途上のケースもあるでしょうが、働く人の権利としての制度があります。

 一方で、自分が病気になった時、その治療と仕事を両立するための法律や仕組みは、これまであまり議論が進まず日本では整っていると言える状況ではありませんでした。これから少子高齢化はますます進んでいくわけだし、年金も不安だし…、きっと誰もが長く働く時代が来るんだろうなということは、うっすらとみんなが感じていることだと思います。そんな中において「病気と仕事の両立」の設備設計が必要なことは分かっていただけるのではないでしょうか。

 実際に国の調査では、仕事を持ちながらがんで通院する人の数は、現在では少なくとも30万人以上いるとのこと。しかし別の報告では、がんと診断された人の3割程度が離職し、同じ会社で勤務を継続しているのは約半数程度とされています。

 がんなど、かつては「不治の病」とされていた病気も診断技術や治療方法が進歩し「長く付き合う病気」に変化しつつあり、病気になったからといって離職しなければならないのは本人、職場にとっても、また広い意味では社会にとってもよいことではありません。

「仕事によって病気を悪化させず、治療と仕事の両立を図る」という取り組みは、これからの日本にとって非常に大切なことになるでしょう。次回からは、「がん」「糖尿病」をはじめとした長く付き合う病気の代表的なものについて、具体的な両立の仕方をご紹介したいと思います。

 (都内事業所勤務・A男)