秋の健康診断の季節がやってきました。苦手とされている方も多いと思います。ただ人生100年時代といわれる中、これから長い期間、働き続けることを思えば、健康診断とはいわば「入学試験」のようなものです。長く働くためには「合格」をもらわないといけません。そのために必要なことを今回はお話しします。

 健康診断の結果に関しては「見る気にならない」という声もよく聞きますね。項目が多すぎて、どの項目を重点的に見ればいいのかが分からないという方です。

 そういった方に産業医の立場として、この項目だけはチェックしてもらいたいと伝えているのが、「脂質」「腹囲」「肝臓」の3点です。他の項目ももちろん大事なのですが、脂質と腹囲については数値が悪ければメタボリックシンドローム、最後の肝臓の数値に関しては脂肪肝などの肝機能障害の疑いが出てきます。

 なぜ注意が必要かといえば、多くの患者さんを診てきた立場から言わせてもらうと、この3つの数値が悪い方は往々にして50代以降に生活習慣病といわれる糖尿病を発症する確率が高いです。

 ところが職場においてありがちなのは「お前どう?」などと同僚に聞いて、ひっかかっている人が多い項目なため、妙な連帯感も生まれ「お前もか」「まあ、いいか」になりがち。そういった職場においては、この結果を放置しておくとこうなりますよと情報提供していくのも大事かなと考えています。

 たとえば肝臓の数値などは少量でも毎日お酒を飲んでいれば、脳がどんどん萎縮してくる、ひいては認知症リスクが高まるなどといった論文を紹介し、休肝日を設けてもらうことも行っています。

 大事なのは健康診断は1回きりじゃないということ。長く働き続けることを考えると、通年の経過を見ることが非常に大切です。50代以降に生活習慣病を発症する方が非常に多いことを考えれば、その前の段階、30、40代のうちに“病気の芽”を摘むことができれば、一番いいワケです。悪い結果が出た段階で早めに対応していけば、後悔せずに済みます。

 次回は健康診断の結果をどのように生かしていくべきか、具体的な方策をご紹介します。

 (都内事業所勤務・B男)