【中高年のための性感染症講座】モグラたたきゲームのように流行…蔓延阻止へ3つのカギ

2019年09月10日 10時00分

 5か月にわたり日本の性感染症にまつわる問題をお伝えしてきましたが、ついに最終回です。

 今の課題は、現在も続いている梅毒感染者のパンデミック。次に、WHOが警告している淋菌の薬剤耐性化問題。世界的には細菌感染の3大脅威のひとつに挙げられているのに、なぜか日本では命に別条はないと軽視されています。さらに、HPVワクチンの安全性の再評価はいまだに結論が出ず、暗礁に乗り上げたまま。他にも、性感染者の低年齢化など、挙げればきりがありません。まあ、性感染症は、時代の変化とともにいろいろ入れ替わりではやります。

 現在騒がれている梅毒も少し前まではすっかり忘れ去られていました。性感染症ではありませんが、風疹だって同じです。本来はあらゆる感染症は常に感染のリスクがあると心しておかねばいけないのです。

 私は性感染症との戦いは、モグラたたきゲームみたいだと感じています。これは、以前ゲームセンターで流行していた、いくつもの穴の中から顔を出すモグラをハンマーで退治するゲームです。

 最初は、ちょっと顔を出すモグラを軽く叩けばいいですが、徐々にいろいろな穴からモグラが登場。ひとつの穴に注目している間に、見過ごしていた他の穴から続々とモグラが飛び出しゲームオーバー。性感染症も最初はこっそりと無症候。いったんは症状を消して潜伏し、こちらを油断させます。しかし、ひそかに動き続け、知らぬ間に、何匹も同時に襲い掛かってきます。

 性感染症との戦いはゲームでは済まされません。妊孕性(にんようせい)を奪い、母子感染による胎児への悪影響、大切なパートナーや家族への感染源となり、放置しておけば自分自身の命を脅かすことさえあります。

 モグラを叩きのめす最近のキーワードは3つ。まずは「POC」。これはPoint Of Careの略。性感染症はベッドサイドで検査でき、すぐに結果が出るのが理想。性感染症は患者の再診率が低いため、検査結果を伝えられない場合が多いのです。迅速に感染原因が分かれば、的確な早期治療が可能になりますし、感染している方を野放しにしないで済みます。

 2つ目は「感染者のパートナーへの対応」。これも感染拡大を防ぐ鍵です。患者本人の検査・治療を行うのは当然。そのパートナーへの検査推奨をいかに進めるか。デリケートな問題ですが、海外では医療者によるパートナーへの感染告知のサポート対応が進んでいるといいます。日本でも、患者とのコミュニケーションで、プライバシーに配慮しながらパートナーマネジメントを医療者が担っていく取り組みは始まっています。

 最後は「ライフスタイルに合わせた性感染症予防教育」。性感染症の蔓延を止めるには、やはり予防・啓発に尽きます。

「どうすれば自分を、そしてパートナーや家族を性感染症から守れるのか」「もし感染したら、誰に相談し、どこで検査し、どんな治療を受ければいいのか」。正しい情報を持っていれば、手ごわく、しつこく、気まぐれな性感染症を叩きのめすことができるでしょう。Good Luck!

 (医療ライター・熊本美加)

☆くまもと・みか=「公益財団法人 性の健康医学財団」の機関誌編集員として、性感染症予防・啓発に加え、幅広く性の健康について情報発信に携わっている。