前回に続いてHPV(ヒトパピローマウイルス)のお話です。

 HPV感染した場合、命にかかわるリスクが高いのは明らかに女性側。日本では、若年世代での子宮頸がんの罹患率、死亡率が増加しています。また、加齢とともに免疫力が下がるので40代以降の女性にもHPV検出率が高いことも最近わかってきました。さらに、喫煙の影響で持続感染が続くリスクも報告されています。

 一般に子宮頸がんは、HPV感染を原因として、前がん病変を経て発生しています。子宮頸がんの予防には、前がん病変での発見で早期治療を行う子宮頸がん検診と、発生の原因となるHPV感染予防の子宮頸がん予防ワクチンがあります。

 子宮頸がん予防ワクチンは副反応報道により、2013年以降、日本ではいまだにほぼ停止状態。実際には重篤な副反応が起きたのは低い確率ですが、それをどう捉えるかは人それぞれでしょう。人は低い確率を過大評価し、高い確率に疑念を抱くものです。100%安全とならない限りリスクを考えてしまうのは当然のことかもしれません。

 しかし、日本の状況に対して世界保健機関(WHO)も警鐘を鳴らしています。日本政府を名指しする形で「乏しい証拠に基づいた政策決定が、有効かつ安全なワクチンの不使用をきたして、真の被害をもたらすものである」との声明を発表。合理的な理由ではなく世論や国民感情の影響で決まったと非難しているのです。

 ワクチンは賛否両論がありますが、HPVは感染した場合、女性のうち100人に1人が10年以上たってからがんになるといわれていますので、2023年になった時点で、日本人の子宮頸がん発症率がどのように推移しているのか、懸念が広がっているのも事実です。

 ワクチンへの不信感があるなら、がんになる前にHPVを見つけて治療することが得策ですが、子宮頸がんの検診率も日本は高くありません。初期の子宮頸がんはほとんどが無症状で、忙しい日々の中で検査を受けるのは後回しになりがちです。ですが、わかった時に手遅れにならないためには、やはり検査を忘れずに受けることが大切。ちなみに、「性の健康医学財団」では現在、無料郵送検査を行っています。

「恥ずかしい」「面倒だから」「費用がかかるから」といった理由から受診しないまま感染を見過ごしてしまうことのないような仕組みを作り、子宮頸がんの撲滅に寄与することを目的としています。プライバシー保護も万全で、自宅でカンタンに自己採取した検体を送るだけです。詳しくは「性の健康医学財団」のHPなどでご確認ください。

 (医療ライター・熊本美加)

☆くまもと・みか=「公益財団法人 性の健康医学財団」の機関誌編集員として、性感染症予防・啓発に加え、幅広く性の健康について情報発信に携わっている。