性の情報配信ニュースレター「月刊TENGA第15号」(25日発行)が、3つの科学的観点から自慰(マスターベーション)の重要性を報じた。

 動物行動学研究家の竹内久美子氏は、人間も動物も自慰で新しい精子を循環させていると指摘し、アカゲザルが「メスとよく交尾できる順位の高いオスの方が、よく自慰をしている」との研究結果を紹介した。

 さらに、自慰数日後の精子は、数が少ない代わりにイキがいい「少数精鋭軍団」だった。竹内氏は「常に発射準備万全なオスにメスはひかれるのかも」として、遺伝子を効率よく次世代に残すための立派な行為が、自慰であるとした。

 医学の視点からも自慰は重要だ。様々な俗説の中には「頭が悪くなる」などという話もあるが、泌尿器科医の岩室紳也氏は「医学的な裏付けはない」と否定する。

「勉強しなければいけない思春期に自慰ばかりしていたから『そんなことをする暇があったら勉強しろ。勉強しなかったら頭が悪くなるぞ』と周囲から叱責を受けたことが“都市伝説”になった」可能性を指摘。実際は「午前中に思い切り自慰をして、午後からしっかり勉強する」計画的な人の方が、好成績をあげるかもしれないという。

 社会学の観点から自慰の善悪の変遷を紹介したのは、東大大学院人文社会系研究科の赤川学教授だ。明治維新以降にキリスト教的価値観を背景とする西洋の「自慰害悪論」が日本に流入し「男女の性行為では(体に)良い電気が発生するが、自慰では悪い摩擦電気しか発生しない」という“謎医学”が信じられていた。

 だが、そもそも日本では「自慰に対しておおらかだった」といい、鎌倉時代の「宇治拾遺物語」ではセックスを自分に禁じた僧が「かはつるみはいかが候うべき(自慰もダメ?)」と周囲に聞き、大爆笑された逸話もあるという。