勃起不全(ED)、早漏・遅漏、包茎、射精障害。男性が自分のアソコについて抱える悩みは十人十色だ。「俺は大丈夫だ」と豪語する猛者でも、いつかは衰えがやってくる。性機能について悩んだとき、医師に相談するのが最善だろう。本紙は、実際のカウンセリング現場に密着取材。性と医療の間の敷居は意外と低くなっていた。
「早漏でお悩みね。医学的定義で早漏は1分。クリアしてる?」「口なら大丈夫だけど、いわゆる本チャンでは1分…。長くても2分。3分もつことはない」「女性から早漏をなじられたことは?」「ない。前(戯)と後(戯)は頑張ってる」
「福元メンズヘルスクリニック」(鹿児島市)院長で性機能専門医の福元和彦氏(39)と、早漏と包茎に悩む20代後半男性とのカウンセリングでのやりとりだ。
「TENGAヘルスケア」がこのほど介護事業の「いきいきらいふ」社と協働して、ネットを通じて募集した一般男性の性機能悩み出張相談を都内で実施。実際の現場に本紙記者が密着取材した。
匿名性が保たれつつ、カジュアルな雰囲気で話は進む。数年にわたり男性の性機能を診断してきた福元氏は自慰回数、パートナーの有無、最近の性行為などを質問する。
この男性の陰茎は先端が窮屈な仮性包茎で「通常時は皮をかぶせている」。坑うつ剤も服用している。福元氏は「早漏に関しては性的興奮を得ると脳内で興奮を抑えるセロトニンという物質が出る。坑うつ剤の副作用でセロトニンが抑制され、ビュッと出ちゃうのかもしれない。包茎で(性的)刺激に弱いことも早漏の原因」と解説。日常的に皮をむいて生活すること、射精を我慢するなどのほか「AVを見て興奮したらすぐTENGAに入れて、勃起を維持しながらイクのを15分我慢して」とアドバイスした。
40代前半の男性は30代後半のときに風俗で初体験以降、ED気味で悩む。「カウンセリングの存在も、どこに行けばいいのかも知らなかった」。バックと正常位では中折れしやすいが、女性の巧みな騎乗位ならイケる。福元氏は「体力低下が問題。スクワットが骨盤の血流を増やす」とトレーニング法を助言したうえで「週1回だけの射精では勃起機能が衰えるから、機能維持のために週3回は射精して」とも。
参加者9人の中にはゲイ男性が2人いた。20代前半の男性は「彼から『体の相性が悪いね』と言われてショックを受けた」。「1(やわらかい)」~「4(硬い)」まで硬さが異なる約10センチの棒「EHS(勃起の硬さの国際標準指標)」を握らせてみる。「1」と「2」を手にした男性に「完全に勃起障害だね。芯がないから挿入できない」と解説し、勃起薬を勧めた。
さらなる検査の情報を求める男性には「血管機能は循環器科。テストステロン(男性ホルモン)値は泌尿器科。『EDなので異常がないか調べたい』と問い合わせればいい」と教えてあげた。
福元氏は、男性が病院になかなか足を運ばない現状に「悩んだ男性が最初に行うのはネット検索。間違いではないが、ネットの答えは膨大だ。悩みというのは顔を向き合わせないと対処が難しい」と嘆く。参加者も「ネット情報をうのみにできなかった。専門家が言うなら間違いないので、試そうと思う」と話した。
現在の医療業界では性をメインに診る医師は少ない。カウンセリングより、20人の高齢者にバイアグラを渡すほうが儲かるからだ。だが「早漏でも包茎でも、100人いたら100人の悩みがある。医学はある程度のデータに裏付けられた答えは示せる」と福元氏。
企画を催したTENGAヘルスケアはメーカーの役割として、悩んでいるユーザーと医療の専門家の仲立ちをしていくという。悩んだときには専門家を訪ねるのが男性自身、そして女性の幸せにもつながるはずだ。