警鐘作家・濱野成秋氏が解説 北の保険外交は米「先制攻撃」の呼び水

2018年04月26日 07時15分

【警鐘作家・濱野成秋氏が解説】3月に訪中し習近平国家主席と会談した北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が、いよいよ27日の南北首脳会談に臨む。正恩氏は23日、自国内で22日夜に中国人32人を含む計36人が死亡した交通事故を受けて中国大使館を訪れ、遺憾と哀悼の意を伝えた。韓国に対しては同日以降、心理作戦の一環である拡声器による体制の宣伝放送を中断。核威嚇から非核化宣言へと転じ、中韓と手を結んだかに見える北の意図は? 正恩氏との首脳会談が予定される米国はどう捉えているのか。米国研究を続け、防衛問題に詳しい警鐘作家の濱野成秋氏が米国の恐るべきシナリオを見通す。

 金委員長は中国と韓国に見え透いた朝見外交を展開し、笑われだした。核威嚇から一転、非核化へ。金外交は巧妙のようで、手のひら返し。これで中韓米は妥協へ進みはしない。中と韓は同調ムードに一転しないだろう。

 周りは皆、勘繰り、模様眺め。瀬戸際外交、寝返り外交は滅びの道であって、近隣相手国から好条件を引き出す以前に、米国から攻められる。もうそんな段階にあることを、北はもっと自認せねば有利な打開策は見つからない。

 対中国ではののしり合い喧嘩を仕掛け、その解決もできてないのに訪中して握手し、韓国には韓国攻めの大将を派遣してまで平身低頭させてわびを入れる。これで中韓両方からの和睦と不可侵条約を確保できると考えて米朝会談に出る気かと、米国に悟らせただけ。いや、北攻めの口実まで与えてしまっただけなのだ。

 これはナチスや軍閥時代の日本が無駄と知りつつソ連や近隣諸国としきりにやった懐柔不可侵条約と同じで、今どき中韓米がそんな手口に踊らされるはずもない。

 北の外交は表層外交で、表面を良くしておけば、相手はしばらくは友好的になる。そこで中韓もこぞって米国の圧力外交を緩めるべしと説いてくれる、北、中、韓の大合唱と考える。

 昔も今も、米国は世界最強の戦略巧者である。シンクタンクはそんなお膳立ては先刻読み通しで、中も韓も安易に北に妥協せぬよう、手を打っているから効果なしなのである。

 むしろこれら、付け焼き刃の保険外交が皆、米国サイドの先手攻略の口実となるのだ。

 なぜトランプは、CIA長官のポンぺオとボルトンを左右両腕に置いたか。それは極東が日本以外、全部、中国の支配下に置かれる前に、北朝鮮を潰しておく必要があるからだ。つまり北が戦争を望まずとも、米軍は攻める機会を虎視眈々と狙っていたと考えてよい。

 言い換えれば米国は北をそそのかし、金陣営をして保険外交させ、米国を腹の底から怒らせた、という連鎖行動へと駆り立てたわけである。米国はこう宣言するだろう。

「北朝鮮は、米本土攻撃のために、まず中国、韓国の両国軍を誘い込み第3次世界大戦を策動した。ゆえにやむをえず自国防衛と世界平和の維持のために、北朝鮮の機先を制する方策しか残されていなかった」と。この大義名分は北朝鮮自らが謹呈してやったわけで、国連も承認するに十分である。

 日本人はトランプの大統領の座はいつもぐらついていると誤解しているが、これは実に甘い観測である。米国メインランドで、ドイツ系アメリカ人の人口は英国系よりはるかに多く、彼はそのトップにある。今まで英国系に譲ってきた覇権を建国2世紀半を経て、ようやくドイツ系が握り、強国米国がドイツ流に世界を牛耳る日は近い。

 真珠湾攻めを知ってて知らぬふりをしたルーズベルトの真意は、英国系とドイツ系という、国内最大派閥があわや分裂、大陸を2つに割っての内戦の危機にあった矢先、両者共通の敵・日本が連合艦隊で攻めてきてくれたので、これは使えると判断したからにほかならない。

 で、今回、日本はどうなるか。米国が第2の“北爆”に踏み切ったら、日本の米軍基地や基幹産業の本社工場に何十発かのミサイルが落ちて当然。日本の中核都市は再度焦土になる。これは陸、海、空3軍の幕僚長級が異口同音に言うセリフだが、日本の迎撃ミサイルの弾数は泣きたくなるほどしかない。(警鐘作家)