東京の勤め先で巨額横領を働き台湾へ逃亡、マネーロンダリングで贅の限りを尽くしていた日本人の中年男が、台湾で捕まった。台湾人の元妻らと「洗銭防制法」(資金洗浄防止法)違反で高雄地方法院検察署(地検)に送検された中沢祥基容疑者(43)は容疑を認め、調べに対し「これまでに二十数億円を横領した」と供述している。男のあり得ないセレブ生活とは――。

 東京の精密部品メーカーで総務課長を務めていた中沢容疑者は、2014年1月ごろから姿を見せなくなった。無断退職の理由は、会社の資金横領。発覚しているだけでも2003年から14年までの間に、なんと計約25億円も懐に入れていたとみられる。

 逃げた先は台湾第2の都市・高雄。共に逮捕された前妻・呂美智(52)とその妹・黄美信(51)両容疑者の故郷だ。現地紙「中国時報」によると、中沢容疑者はもともと呂容疑者が経営する東京のカラオケクラブの客で、やがて親密になった2人は結婚。ところが14年1月、中沢容疑者は会社名義で5億円以上もの小切手を振り出し、妻に渡すなどした直後、離婚している。これは事態の露見を防ぐための偽装離婚だったとみられている。

 中沢容疑者は、手にした大金で高級ブランドのバッグや腕時計、ジュエリーなどを大量に購入、これを台湾で売りさばくことで多額の現金をゲット。高雄で約1億円の戸建て、高級マンションなど3軒の不動産、計5000万台湾元相当(約1億8250万円)を購入し、超リッチな生活を送っていたという。

 地元メディア「三立新聞網」によると、豪邸を3つも所有しているにもかかわらず、毎日のように5つ星ホテルを泊まり歩き、デパートで多額の買い物をし、毎月のクレジットカード支払額は少なくとも20万台湾元(約73万円)だったとか。

 台湾の平均月収は、日本円で12万円ほどで、そんな豪遊をしていれば当然目立つ。マンションの付近住民たちによると、中沢容疑者らが働いている様子はなく、不審に思われていたという。

 地元住民に目撃されていたのは、ときどき犬の散歩に出る姿ぐらい。さらには3000万台湾元(約1億950万円)相当の土地を購入したことも明らかになっている。

 中国時報は、中沢容疑者らが頻繁にマカオへ行っていたとも報じているが、「その渡航目的は、カジノで豪遊するほか、マネーロンダリングもあったはず」と指摘するのは香港在住記者。

「マカオでは、カジノ周辺の至る所に『押』という看板が乱立しているが、これらは全て質屋。軒先には宝石や金、ブランド品などが飾られきらびやかだが、カジノで惨敗した客が負け分を払えず払い下げたものだ。同時にマフィアのマネーロンダリングの窓口になっているともいわれる。そこでもバッグや時計を売りさばいたのでは!?」

 横領に気づいた会社側から被害届を受けた日本の警視庁は、14年1月に会社の預金口座から約5億5000万円を着服した業務上横領容疑で、中沢容疑者を指名手配。今年に入り捜査協力を依頼された台湾の警察当局はさる19日、入管当局に現れた同容疑者を身柄拘束した。関係先の家宅捜索では、現金のほか大量の高級時計やブランドバッグ、宝石類など約1億3000万台湾元(約4億7500万円)相当を押収。中沢容疑者は今後、日本に移送される見通し。

 大きなリスクを冒してまで横領、海外逃亡した理由については「カラオケクラブで出会った呂容疑者に貢ぐうち、自己資金だけでは足りなくなり、会社の金に手をつけるようになったのでは」との警察コメントを地元紙「自由時報」が報じている。それがエスカレートし歯止めのきかなくなった中沢容疑者は、警察での取り調べ中、日本にいる両親へ電話を掛け「悪いことをしてしまった。もう疲れた」と話し、泣き崩れたという。