PB(プライベートブランド)の次にくる“NPB”って何!? 流通ウォッチャーの渡辺広明氏(50)がコンビニで起きている新潮流について徹底解説してくれました。ちょっと知るだけで日常の買い物が楽しくなりますよ!

 3日にセブン&アイHD限定で発売されたビール「キリン 一番搾り 匠の冴」(350ミリリットル=税込み221円)が流通関係者の間で話題となっている。

「販売チャネルがセブン&アイ限定にもかかわらず、NB(ナショナルブランド)の『一番搾り』を冠したビール。一方、同社は発泡酒でサントリーと共同開発しPB『THE BREW』(350ミリリットル=税込み123円)を販売しており、こちらはセブン&アイのロゴがはっきり記されているのです。ロゴがあるかないかの違いはささいなことに思われるかもしれませんが、実は大きな違いがあるんです!」(渡辺氏)

 それを理解するために、日本の小売業にPBが浸透してきた背景を簡単に振り返ってみよう。

(1)日本でPBをけん引したのはダイエーのPBブランド「セービング」で、その成功がイオン「トップバリュ」など多くの後継を生んだ。それらのPB商品はNBよりも価格が安く、販売者のみで製造メーカーが記されていないことが多かった。

(2)2007年、セブン&アイHDが「セブンプレミアム」をスタート。PB商品にも製造メーカーを記載する方針を打ち出す。以降、他社でもPB名とNB名の両方が表示されたダブルネーム(あるいはダブルチョップ)と呼ばれる商品が増え始める。

(3)そして現在、「一番搾り 匠の冴」のようにPB名は表示されていないが、実質的にはPBのように売られるNB商品が登場しつつある。

「ただのコンビニ限定ではなく、コンビニ各社が限定で販売するNBですから、NPB(ナショナルプライベートブランド)とでも呼ぶべき商品です。日本野球機構ではありませんよ(笑い)」

 本紙が取材を進めると、「カルビー ポテトチップス にんにく好きのための濃厚にんにく味」(ローソン限定)、「MEN’S TBC フェイシャルシート」(17日発売、ファミリーマート限定)、「コカ・コーラ なごみおいしい緑茶」(ローソン限定)など思った以上にNPBが売り場に並んでいることがわかった。

 NB名しか表示されていないことから消費者がひと目ではなかなか気づきにくいNPBが増えている理由とは何なのだろうか?

「簡潔に言うならば、コンビニ各社のPBが増え過ぎた“揺り戻し”でしょう。『PBは利益率が高い上、他社との差別化になる!』と積極的に取り組んできましたが、ロゴはもちろんパッケージデザインも統一するPBが増え過ぎた結果、売り場に買い物を楽しむワクワク感が少なくなってしまったのです。本来、コンビニは『この商品、気になるな~』とついで買いを誘発することで成長を遂げてきましたから、より訴求力のあるパッケージとブランドを使ったNPBを展開して売り場にアクセントをつけようとしているのです!」

 それだけではない。NB商品の場合、ドラッグストアやディスカウントストアがコンビニよりも安く売ることから価格競争に巻き込まれてしまうが、コンビニだけのNPBなら価格崩れが起こらない。消費者にも「ここでしか買えないから、まぁいいか…」といった心理が働くのだ。

 成長が頭打ちになりドラッグストアとの競合が一層厳しくなっていると報じられているコンビニ業界だが、圧倒的な店舗数と販売力を持っているからこそ可能なNPBが今後、大きな武器になるとみられている。

★プロフィル=わたなべ・ひろあき 1967年生まれ。静岡県浜松市出身。大学卒業後、ローソンに22年間勤務。店長を経て、コンビニバイヤーとしてさまざまな商品カテゴリーを担当し、商品開発にも携わる。現在は流通アナリストとして流通専門誌への執筆や「ホンマでっか!?TV」(フジテレビ系)に出演。22日から放送される新番組「モノ作り応援バラエティ 東京プロダクトコレクション」(TOKYO MX)では番組MCを務める。