週刊新潮が報じた財務省の福田淳一事務次官(58)の女性記者へのセクハラ疑惑をめぐり同省は16日、報道各社に調査協力を求める異例の文書を出した。福田氏は一連の疑惑を否定、訴訟も辞さない構え。被害を訴えた女性記者をウソつき呼ばわりしているも同然だ。こんな福田氏を擁護するように財務省は情報提供を書面で呼びかけた。だが、これは「文句があるなら出てこい!」と言っているようなもの。舞台裏を探ると、これには森友問題で煮え湯を飲まされた麻生太郎財務相(77)の“ご意向”が働いたとの情報が浮上している――。

「抱きしめていい?」「手を縛ってあげる。胸触っていい?」

 セクハラ発言の音声テープまで流出していながら、福田氏は疑惑を真っ向から否定した。

 この日、財務省はホームページ上に「福田事務次官からの聴取結果」と題した文書を掲出。要約すれば、相手の女性記者とは「このようなやりとりをしたことはない」「女性記者と会食した記憶もない」「相手が本当に女性記者なのかもわからない」とのこと。つまり全面否認。女性記者の告発は間違いでウソをついている、と言っているようなもの。

 他方で、日常的に卑猥なワードを多用しているかどうかについては「お恥ずかしい話だが、業務時間終了後、時には女性が接客をしているお店に行き、お店の女性と言葉遊びを楽しむようなことはある」と回答。セクハラ発言を「言葉遊び」に言い換えた。

 現在、同氏は週刊新潮を発行する新潮社に対し、名誉毀損で提訴する準備を進めているという。

「テープの声が自分であることは否定しないのに、内容はセクハラには当たらないというめちゃくちゃな理論。疑惑を認めて事務次官を辞職すると思っていた担当記者は面食らっていました」とは政界関係者。

 さらに福田氏を援護射撃したのは財務省。この日、財務省担当記者で構成される「財政研究会」に対し、調査協力を要請する異例の文書もホームページ上に掲出した。

 文書では「福田事務次官との間で週刊誌報道に示されたようなやりとりをした女性記者の方がいらっしゃれば、調査への協力をお願いしたい」と呼びかけている。

 同省は「一方の当事者である福田事務次官からの聴取だけでは、事実関係の解明は困難」と説明した上で「客観性を担保する観点から、外部の弁護士に委託して、引き続き福田事務次官への調査を続ける」としたが、中身は新潮にリークした女性記者の“あぶり出し”でしかない。

 野党からは批判の声が相次ぎ、共産党の小池晃書記局長は「結局、(女性記者が)出てこられないだろうと思ってやっているとしか思えない。セクハラ対応の大原則は被害者保護。セカンドレイプになると思うし、恫喝だ」と指摘。

 調査の窓口となっている銀座総合法律事務所は本紙取材に「公平中立な観点で真相を解明しようと思ってのことです。被害女性や情報提供者のプライバシーは必ず守ります」と述べたが「まるで犯人捜しをしているように感じるが?」という問いには「そういったご意見があると受け止めさせていただきます」と回答した。

 この文書が、より悪質な点は、当該女性記者の素性は福田氏も財務省側もすでに“つかんでいる”ことだ。本紙を含めたマスコミも女性記者の実名、勤務先までおおよその見当はついている。

「報道各社が把握しているのに、財務省が知らないはずがない。知ってて調査依頼するのだから、タチが悪い。マスコミにしてみれば、今後同じようなネタが出たら『リーク犯捜しするぞ!』という圧力にしか感じられない」とはテレビ関係者。

 これらの絵を描いたのは誰なのか?

 永田町で浮上しているのは麻生財務相。前出の政界関係者は「福田氏がセクハラ疑惑で辞職となれば、トップの麻生氏の任命責任が問われ、今度こそ辞任せざるを得ない。麻生氏は一連の森友問題でマスコミに対する不満が蓄積しており、この機に乗じて、マスコミを絞り上げてやろうと考えたのではないか。事実、この件が報じられた際に麻生氏は新潮にネタをリークした女性記者に対し『仮に社員なら情報漏えいに当たるだろ』と主張していた」と話す。

 マスコミに一発かますつもりが、火に油を注いでいることになぜ気付かないのか――。