兵庫県福崎町の町立中に在籍した3年間にわたり、同級生から暴行などのいじめを受けたのに、学校が十分に対応せず、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症し働けないとして、卒業生の男性(28)と母親が26日、同級生だった男性と両親、町に計約2億円の損害賠償を求め、神戸地裁姫路支部に提訴した。

 訴状によると、原告男性は2002年に入学。3年間を通じて元同級生から殴ったり蹴ったりされる暴行などの被害を受け、別々の高校に進学した後も嫌がらせが続いて高校の長期間休学や大学の中退を強いられたと主張。14年にPTSDと診断され、仕事に就くことができないとしている。提訴後、母親が兵庫県姫路市内で記者会見し「私たち家族は長い暗いトンネルの中。子供の人生を壊した人々に罪を償ってほしい」と訴えた。

 当時の中学校長だった福崎町の高寄十郎教育長は「いじめがあった認識はあるが、その都度全力で対応してきた。訴状が届いておらず、詳しいコメントは控えたい」と話した。

 たとえ小学校、中学校時代のいじめだろうが、被害者の人生は悪い方向に変わってしまうことが多く、小さいころに思い描いていた、輝けるはずの人生を送ることができなくなってしまう大人もいる。最悪の場合、自分の人生を絶ってしまう被害者もいる。

 そこで13年に「いじめ防止対策推進法」が施行された。いじめを「当該児童と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものも含む)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう」と定義している。被害者が「いじめ」と感じたら、「学校の調査」が行われなければならない。

 しかし、文部科学省関係者は「教育現場が“いじめ法”を邪魔と思っていると感じさせられるケースがある。というのも、生徒からいじめ相談を受け、学校が調査すれば、教員たちの安全配慮義務違反や能力不足が露呈し、学校のイメージが失墜してしまうからです。教員、学校、教育委員会、公立と私立の学校を監督する行政部署という現場がしっかり“いじめ法”を運用してほしい…」と語っている。