拉致疑いの男性「入国」と北朝鮮が伝達 「なぜこの2人だけ…」

2018年03月26日 17時30分

 日本政府が「拉致の可能性を排除できない」としている神戸市の元ラーメン店店員の金田龍光さん(26=失踪当時)について、北朝鮮が2014年の日本側との接触で、「入国していた」と伝えていたことが25日、分かった。日本政府関係者が明らかにした。

 日本側は本人と面会しておらず慎重に対応、本人名での出国記録はないなど拉致を裏付ける明確な証拠がなく、被害者に認定していない。

 北朝鮮はこの時期、日本政府が拉致被害者に認定している田中実さん(28=同)の「入国」も日本側に伝えてきたことが既に判明している。金田さんの入国情報の伝達時期は、北朝鮮による拉致問題の再調査などを盛り込んだ「ストックホルム合意」を両国が交わした14年5月より前だった。日本側は揺さぶりの可能性もあるとみて警戒していた。

 米国や韓国との首脳会談に臨む決断をした北朝鮮とのトップ交渉を模索する安倍晋三政権がどう対応するかが注目される。日本政府関係者によると、本人の帰国の意思は不明で、平壌に住んでいると伝えられたという。

 拉致被害者関係者からは「なぜこの2人だけ…」「これで解決になるとは思えない」と、日本政府に真相究明を求める声が上がった。

 被害者蓮池薫さん(60)の兄で家族会元事務局長の透さん(63)は「なぜ北朝鮮が田中さんと金田さんを選んで情報を出してきたのか、理由を分析する必要がある」と指摘する。特定失踪者としては初めて北朝鮮が入国を認めた金田さん。「日本側は、特定失踪者が何百人もいると主張しているから残りはどうなんだ、と納得できないだろう。これで解決にはならない」と話した。

 田中さんと金田さんらの救援活動を続ける「救う会兵庫」の長瀬猛代表は「金田さんを拉致被害者に認定すべきだ。認定作業が進んでいない状況を厳しく検証したい」と、政府の取り組みに注文を付けた。

 一連の情報について「本人の意思が反映された話なのか」と疑問を示し「北朝鮮だけの情報をうのみにせず、冷静に判断したい」とした。

 政府が、拉致の可能性を排除できないとしているのは金田さんを含め883人いる。