花粉症には大人の約40%、子供の約30%が悩まされ、今や日本人の国民病となっている。飛散予測を立てる日本気象協会も、東北から中国、四国地方にかけて、前シーズン比で「非常に多い」飛散量の都府県があると注意喚起。同比で東北は210%、関東甲信は150%が見込まれる。一部地域では飛散も進み、目のかゆみや鼻水ズルズルの苦しみは4月まで続くとみられ、対策グッズはバカ売れ状態だ。そんななか「避粉地ツアー」がひそかなブームになっているという。

 昨年12月、都福祉保健局は、都内のスギ花粉症有病率を48・8%(推定)と発表した。都民の2人に1人が花粉症。今年は飛散量が多いだけでなく、深刻な症状を訴える患者が殺到している。

 都内のある耳鼻咽喉科医は「去年より飛散量が多いこともあって、今年は患者が増えている。しかも例年に比べて、症状がひどい患者が多い。昨年末から、今年にかけて猛威を振るったインフルエンザの影響ですよ。インフルエンザや風邪が完治しないまま花粉症になる。または花粉症になってから風邪をひく。そのために気管支炎になったり、免疫力が低下しているときはアレルギー症状が強く出るんです。かといって、治療は対症療法しかありません」と言う。

 流れる鼻水と比例するように、花粉症市場も拡大している。

 最近、火がついたのは、ティッシュケースとゴミ箱が一体化した商品「ドレッサーモード」。忙しい職場では、社員が鼻をかんだティッシュをデスクに山積みにしている光景がよく見られる。衛生的によろしくないが、ゴミ箱とティッシュが同じ場所にあれば、そんな問題ともおさらばだ。

 開発した「KOKUBO」の広報は「うちの社長がコタツでみかんを食べたとき、ゴミを捨てたいけどコタツから出たくないと考えたことがきっかけで開発された」と明かす。発売は2011年だが、今年になって急に花粉症対策としてヒットしたことに「意外だった」と広報もビックリ。

 本紙報道をキッカケにバカ売れしているのが、平昌五輪で2連覇を達成した男子フィギュアスケート選手・羽生結弦(23=ANA)が愛用する高級マスクだ。

 製造する「くればぁ」の担当者は「ご紹介いただいた次世代マスク『bo―biカロリー』は発売後約1か月で当初目標の3倍、売り上げ1億円を突破。ご紹介後、テレビ番組など他メディアでも続々と紹介され、新商品初動1か月間としては過去最大のヒットになりました」と喜ぶ。

 羽生の金メダル獲得でさらに人気が出て、現在は2~3週間待ち。花粉だけでなくPM2・5や黄砂にも効果があり、まだまだ品薄は続きそう。

 ほかにも「JINS」が今年発売したメガネ「花粉CUT MOIST」も売れているという。

 ただ、グッズでいくら防ごうが、花粉を完全シャットアウトはできない。そこで、花粉が飛んでいない“避粉地”に旅行するツアーも人気だ。

 某旅行代理店関係者は「花粉症に悩まされる患者がこの時期になると、スギ花粉がない北海道や沖縄、さらには離島に避難していたんです。そこに目を付けた旅行代理店が、数年前から週末の避粉地ツアーを企画し、ツアー客が急増しているんです」と語る。

 たとえば、長崎県平戸市内の的山(あづち)大島という離島では、08年から避粉地ツアーが実施されている。

 花粉症の医療費は国の財政を圧迫するだけでなく、目のかゆみや止まらない鼻水とクシャミや頭痛が伴って、集中力や思考力低下につながって労働力が低下するため、経済損失は約5000億円とされている。

 花粉症を完治させる治療法の開発を期待したいところだ。