中国の全国人民代表大会(全人代=国会)は18日、全体会議を開き、李克強首相(62)を再選した。また関係筋によると、習近平指導部は王毅外相(64)を楊ケツチ国務委員(67=副首相級)の後任に昇格させる人事を固めた。2期目の習指導部の全容は19日明らかになる。全人代は20日閉幕。習氏の派閥強化に向け様々な思惑が交錯している中、全人代の記者会見の場で、美人記者によるバトルが繰り広げられていたことが大きな話題となっている。

 きっかけは、13日にテレビで放送された記者会見だった。記者席の最前列には赤と青という対照的な色のスーツを着た美人記者2人が隣り合わせに座っていた。

 1人は、中国で美人記者として有名な張慧君氏で、赤い服を着ている。「中央電視台(CCTV=中国中央テレビ)」の記者兼キャスターとして活動後、現在は「アメリカン・マルチメディア・テレビジョン USA(AMTU)」という米国にあるテレビ局で、管理職を務めている。

 もう1人は、上海テレビ局の経済専門チャンネル「第一財経」の美人記者、梁相宜氏で、青い服を着ている。名門・中国伝媒大学を卒業後、有力紙「北京晨報」で記者を務め、その後、上海テレビ局に転職し、第一財経で活動をしている。

 会見が始まり、張氏が質問をしだすと、梁氏は冷めた目で張氏をにらみつけた。さらにあきれるような表情になり、眉間にしわを寄せ、白目になって「聞いていられないわ」とばかりに、露骨にバカにする顔になった。その映像が放送されると、中国メディアは「エリート美人記者の戦い勃発」と騒ぎ立てた。

 張氏の質問は習政権へのおべっかのような内容だったという。多くの中国メディアが2人の映像を繰り返し流したり、パロディー動画も作られたりしている。中国のネットで梁氏は「白眼姐」と呼ばれるほど人気になった。

 実際、2人はこの時の様子について、「あの赤い服着た記者、ダラダラ質問して本当にバカみたい」「青い服の記者、なんで私にガンつけているの?」とそれぞれSNSで友人に本音を明かしている。

 中国人ジャーナリストの周来友氏は「中国では、このような全国的に注目される会見の場に、少しでも自社の存在を目立たせようと美人記者を送り込むことはよくあります。今回の美人記者バトルですが、どうやら軍配は梁記者に上がったようです。張記者の所属とされるAMTUについて中国メディアが調査したところ、フェイスブックでAMTUをフォローしている人数はわずか34人という弱小テレビ局でしたから」と指摘する。

 それでも「今回の一件でAMTUが中国全土に知られたことは確かです。有名になるため、こうした炎上商法をAMTUが狙って演出したのだとしたら見事です」と周氏は語る。

 その後、張氏はAMTU側から「所属の記者ではない」と否定され、またネットでは軍の中佐だったという噂も流され、この騒ぎはなかなか収束が見えない。結局、2人は全人代を取材する資格を取り消されてしまったという。様々なドラマが生まれる全人代だが、中国の男性視聴者にとっては、今回ばかりは政治よりも美人記者の動向の方が大きな関心事だったようだ。