なぜ「早期帰還」が前提なのか 福島に「真の復興」を

2018年03月15日 19時00分

F1で働く作業員

【ラジオDJ・ライターのジョー横溝氏が福島第1原発・現地取材で見たもの:短期集中連載・最終回】福島第1原発(F1)問題を長年、取材するラジオDJ・ライターのジョー横溝氏(49)による、連載最終回は「福島への帰還問題」と未来への提言だ。

 F1構内の空間線量が下がり、構内の約9割を軽装で移動できることは既に書いたが、なんと線量が下がったのを理由に「作業員の賃金がこの4月からダウンする」という。これからが廃炉に向けての本格作業なのに一体どういうことか?と首をかしげたくなる。

 こういう根本的な認識違いが、原発周辺地域でも起きている。いわゆる「帰還」問題だ。

 取材の前後に立ち寄った富岡町は、事故前は1万5000人ほどの人口だったが、去年4月に一部地域を除き避難指示区域指定が解除され、帰還したのはわずか400人ほど。それはそうだと思う。そもそもなぜ避難したのか? 一つは線量が高く被ばくの可能性があったから。もう一つは原発が再び爆発する可能性があったから。ならば原発の廃炉の“目安”が40年ならば、危険な原発が残っている40年間は避難可能にすべきだろう。

 なのに、政府の方針は「早期帰還」が絶対的な方針で、帰還しない者の補償を打ち切ろうとしている。なぜこういう行政の矛盾があるのか? この震災、原発事故から我々は何を学ぶべきだったのか? 何をどう変えるべきだったのか? その答えの一つが「中央と地方の関係改善」だったと思う。

 この国では中央で立案された経済政策が地方に押し付けられてきた。「ハコモノ行政」といわれるもので、集客力のないテーマパークなどが造られては失敗してきた。それでも人口が増えているうちはまだよかった。ちなみに震災前、東北最大の都市・仙台でも人口減少が始まっていて、東北は中央に頼らない新しい自治、市民社会を考えないといけない時期だった。

 そこに震災と原発事故が起きた。新しい市民社会をつくるチャンスだったが、震災後にできた「巨大な防潮堤」は結局は「ハコモノ行政」で「被災地復興」ではなく「被災地復興事業」と言いたくなる。

 そもそも、原発は中央が考えて地方にあてがった最大にして最悪の「ハコモノ行政」で、経済的にだけうまくいっていたので、その原発に地方も依存してきてしまった。だが、計画が進む「福島イノベーション・コースト構想」は原発に代わる依存の始まり、つまり「安全な原発」になる可能性が指摘されている。

「早期帰還」にこだわりすぎて地元のためにならない「ハコモノ」はやめて、地域住民のやりたいことを、やりたい方法で、自分たちの手でやるシステム、社会をつくることが真の復興だと思う。そのための方法の提案も既に各所から出ている。だが中央はどうしても「復興事業」がしたいようだ。

 4回にわたって7年目の福島第1原発の現状を書いてきたが、ここまでの関係者の尽力は本当に頭が下がる。ただ、困難な状況は正直に吐露し、国民の協力のもと、復興・廃炉を誠実に進めるべきだ。3・11は日本国民全体の問題なのだから。(終わり)