福島第1原発「7年後」の現実

2018年03月12日 17時30分

バスの中から撮影した3号機

【ラジオDJ・ライターのジョー横溝氏が福島第1原発・現地取材で見たもの:短期集中連載1】福島第1原発(F1)の事故を引き起こす原因となった東日本大震災から11日、丸7年を迎えた。果たして事故は収束に向かっているのか? 答えは「ノー」だ。音楽誌「Rolling Stone」のシニアライターを2017年まで務め、音楽だけでなく社会問題などの取材にも取り組むラジオDJ・ライターのジョー横溝氏(49)が今年も現地取材を敢行。ジョー氏がF1の「目に見える安全」と「目に見えない危険」をリアルにえぐり出す。

 東日本大震災から7年が経過した。福島の復興も順調に進み、F1の事故も収束に向けて確実に前進していると考えている人も多いと思う。

 2011年12月16日に野田佳彦総理大臣(当時)が「発電所事故収束宣言」を発令。安倍晋三総理もF1の汚染水に関して、13年9月7日に「アンダー・コントロール」だと主張した。2度の安全宣言とマスコミによる復興や廃炉進展の報道。日本人が「福島第1原発はもう大丈夫」という“新・安全神話”に取り込まれるのも無理はない。

 だが、現実はあまりにも違った。F1はいまだ「危険の真っただ中」にあるし、廃炉作業は「五里霧中の状態」だ。今年の1月30日、約1年ぶりにF1構内を取材した。驚いたのは、皮肉にも構内の「空間線量の低さ」だった。

 F1の敷地面積は東京ドーム74個分だが、事故から7年たった今、敷地内の「約9割」を平服に近い軽装備で歩くことが可能だ。これだけだと「F1は安全だ!」と言いたくなるが、それは目に見える“うわべ”だけのこと。目に見えない、残った「約1割」のレッドゾーンがどうにもならない。事故が起きた原子力建屋付近はいまだに線量が高く、作業も困難を極める。一番問題なのは「事故を起こした原子炉はほぼ手付かず」という点。本丸に関しては「事故当時のままの危険」が潜んでいる。

 その一つが「使用済燃料棒」だ。

 現在、1号機に392本、2号機に615本、3号機に566本、計1573本の使用済核燃料棒は、事故を起こした原子力建屋上部のプールに置いたままだ。先日、3号機のプール周辺が初めて公開されたが、人間が1時間作業するのが限界の高い空間線量だった。その燃料棒を浸す水や使用済核燃料棒の線量はさらに高く、再び巨大地震が起きて建屋が崩壊したり、津波がこのプールをのみ込んだ場合、空気中や海に大量の放射能が放出される。

 もっと心配なのは「燃料デブリ」の存在。この「デブリ」とは「溶け落ちた燃料棒」のことで、使用済燃料棒より線量が高い。F1の場合、メルトダウンを起こした燃料棒は圧力容器を突き抜け、格納容器の底に達している、と“推測されて”いる。というのも、メルトダウンを起こした1号機、2号機、3号機いずれでも、デブリの場所は7年たっても特定されていない。どこに危険なデブリがあるかすら、確実に把握できてない。

 あきれたことに、原発開発に関わる日本の技術者たちは「事故を起こした原子力格納容器からデブリを取り出す」ことを想定していなかった。「原発安全神話」を盲信するあまり、最悪の事態を想定していなかった。事故から7年もたっているのに「取り出す方法はいまだ研究中」というレベルだ。事故を起こした格納容器内がどのような状況であるかも完璧には把握できていない状況で、線量の高いデブリを取り出すこと自体、かなりの難易度であることは明白だろう。

 もちろん、自然災害のリスクもある。建屋上部プール内(ビル5階ぐらいの高さ)に置いてある使用済核燃料棒に比べて、デブリは地面とあまり変わらない高さにあり、もし津波が起きれば真っ先にデブリが波を食らう。

 東京電力社員に津波対策について聞くと「津波が来ても水が建屋に入らない遮水性の扉を付ける予定がある」と教えてくれた。ただし、その完成には「2年ほどかかる」という。「扉ができる前に大きな津波が来たら?」と再び東電社員に聞くと「地震や津波が来ないように祈るしかないですね」という返事だった。

 日々、大量に発生する汚染水も全く安全ではない。原子力建屋の中には大量の汚染水がある。津波に襲われたらこれも海に放出される。

 現在、汚染水はポンプでくみ上げ、トリチウムという核物質以外の核種を除去し、敷地内にあるタンクにためている。そのタンクも2020年で敷地内いっぱいになる。では、20年以降は? 東電からの返答はシンプルだった。「まだ具体的な対策はありません」。安倍総理が宣言した「アンダー・コントロール」どころか、いまだ「その場しのぎ」の状態が続いている。

 F1の廃炉まで少なくとも「40年」はかかるという。その40年という数字の根拠も不明。我々はその40年という長い期間、自然災害やテロリストがF1を襲わないことを願うしかない。それを果たして「安全」と言えるだろうか?(つづく)

☆じょー・よこみぞ=1968年生まれ。東京都出身。早稲田大学卒。2017年まで雑誌「ローリング・ストーン」日本版シニアライターを務める。現在は音楽を始め社会問題に関する取材・執筆を行い、新聞、雑誌、ウェブでの連載も多数。ラジオDJとしてはInterFM897でレギュラー番組2本、ニコニコ動画でもレギュラー番組2本。音楽イベントや社会・政治問題のシンポジウム、討論番組のMCも担当する。