トランプ米大統領が8日(日本時間9日)、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と5月までに米朝首脳会談を開く意向を示したことで、次の展開が注目されている。「チビのロケットマン」「老いぼれの狂人」と互いにののしり合っていた2人の会談実現に世界は驚くばかりだ。

 北朝鮮に特使団で訪問していた韓国の鄭義溶国家保安室長が米国に渡り、正恩氏のメッセージをトランプ氏に伝えた。正恩氏は非核化、米韓合同軍事演習の容認、核・ミサイル実験も凍結するとした。史上初となる米朝首脳会談へ向け、完全に折れた形となった。

 北朝鮮事情に詳しい拓殖大学客員研究員で元韓国国防省北朝鮮分析官の高永テツ氏は「4月に予定されている米韓合同軍事演習で、米はイラク戦争以来の大空母団を集結させ、北朝鮮への攻撃態勢を準備していた。金正恩は軍事演習から逃れるためにごまかしの“降伏”をしたにすぎない」と指摘する。

 長年、北朝鮮は挑発↓緊張↓対話↓約束のほごを繰り返し、米特使として交渉に当たってきたカーター元大統領や米高官を翻弄してきた。

「何度、核兵器(開発)の放棄宣言するとウソをついてきたか。2008年には米からテロ支援国家指定の解除を受け、原子炉冷却塔を爆破させたが、翌年には核実験した。2歩前進するために一歩後退するという軍事的戦略です」(高氏)

 一方でトランプ氏も焦りを隠せない。閣僚・側近のドミノ辞任が止まらず、秋の中間選挙までに目に見える“手柄”が欲しい。

「北朝鮮の核兵器に対し、米国防総省は保有、国務省は認めないとダブルスタンダードの立場を取っている。外交路線も対話と圧力で、対話に応じるのは当然。ただ、北朝鮮が米をダマしたとわかれば、今度こそ軍事行動を取るでしょう。どっちに転んでも、トランプ大統領は支持を得られる」(高氏)

 やはりキツネとタヌキの化かし合いでしかないのか。