なまめかしくも「使って気持ちいい」輪島塗の魅力

2018年03月07日 07時15分

裸の女性を起用した刺激的なビジュアル

 石川県輪島市で生産される伝統工芸漆器「輪島塗」の老舗の跡継ぎが新しい挑戦を始めた。輪島塗の「人肌に近い」という特長を前面に押し出し、女性のきめ細かい肌のような官能的な作品を生み出したのだ。バブル崩壊とともに衰退した輪島塗を支えるのは、伝統文化を新たに解釈する次世代の感性。なまめかしくも「使って気持ちいい」輪島塗の魅力を聞いた。

 1700年代から続く輪島塗の製造販売「輪島キリモト」は、世界で活躍する新鋭クリエーターの感性と伝統技術を組み合わせて、漆の魅力を再定義する新プロダクトブランド「IKI―by KOHEI KIRIMOTO」をスタートした。

 ブランドディレクターは「キリモト」代表の息子・桐本滉平氏(25)が務める。新ブランドでは漆の「人肌に近い」という魅力を改めて見つめ直した。コップ(2万6000円)やおわん(2万3000円)など5つの作品には「ヒトハダに一番近い」という冠が付く。

 桐本氏は「水分を吸って吐く漆は、生きている人の肌と構造が非常に近い。唇が触れたり、手で使う気持ちよさが漆器にはある」と話す。

 色みも黒や赤がスタンダードの輪島塗では珍しく、日本人の肌色を使った。ヌーディーな質感で女性的ななまめかしさを思い起こさせる。

 作品には「食べる行為に気持ちを傾けてほしい」との願いも込められている。スマホ片手に“ながら食べ”をする人も、つやめかしい食器であれば、食事を五感で味わえるだろう。

 女性的な要素を取り入れるのは輪島塗に共通のもので「漆の塗り方や木材の削り方について、人間の曲線を例にすることがある。職人とデザイナーが考えを言語化して共有するときには『くびれの曲線』や『乳房の曲線』などの表現を用いる。そのため、工房には女性のヌード写真やグラビアが置いてある」(桐本氏)。

 職人らが「このおわんの曲線は、こっちの女性の乳房の形を参考にしよう」などと会話している光景は意外だが、高尚な文化の世界を身近に感じられる。

 伝統工芸の縮小の問題は、輪島塗にも等しく降りかかっている。産地の生産額は、ピークの1990年ごろと比較して、一時は4分の1まで減少し「株式会社の形態をとる老舗の上位1~3社が軒並み潰れた」(桐本氏)。失職した職人があふれる状況に、キリモトでは仕事の進め方などに変革を起こした。

 産地のルールからは、それらの取り組みに対して後ろ指をさされることもあったが、今では「キリモトがダメなら輪島はダメ」とまで言われるように。高級品のため手が届きにくいと考えられている輪島塗。長い目で見れば、そんなことはない。

「輪島市の小学生は、卒業制作で必ず輪島塗を作る。それは大人になってもずっと使い続けられる」(桐本氏)

 作品は7日から13日まで、東京の「伊勢丹新宿店」で販売される。