北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と父の金正日総書記(故人)が、1990年代に偽名でブラジルのパスポートを取得し、西側諸国のビザを申請していたことがわかった。

 複数の欧州情報筋がロイター通信に明かしたもので、問題のパスポートは96年2月、チェコの首都プラハのブラジル大使館から発給されており、正恩氏と正日氏の写真が貼られているが、いずれも偽名。出生地はブラジルの大都市サンパウロとなっていた。

 ブラジルの情報筋はロイター通信に「パスポートは少なくとも2か国の西側諸国のビザ申請に使われ、ブラジル以外に日本や香港に渡航するために使用された可能性がある」としている。

 正恩氏は91年にブラジルの偽造パスポートを使い、母親の故高英姫氏や妹の与正氏、兄の正哲氏らと極秘来日し、東京ディズニーランドで遊んでいたことがわかっている。

「正日は80年代に偽造パスポートを使い、東京に滞在し、赤坂で豪遊していた。お気に入りの女性には、当時まだ輸入禁止だった観葉植物をプレゼント。91年ごろの正恩氏や与正氏は子供。アキバで大好きなファミコンのソフトなどを大量に買い込み、平壌に持ち帰っていたとみられる」(日本の公安関係者)

 今回の偽造パスポートは91年以降に取得したものだが、金ファミリーの海外渡航への関心を示すものとして重大な関心が寄せられている。

「96年前後は、金正日氏が『腎臓病を悪化させた』という重病説や北朝鮮の国内で軍部によるクーデター騒動が伝わった時期。金ファミリーはルーマニアなど東欧の独裁政権崩壊を知り、自分たちの身の安全を確保する目的で、偽名でパスポートを取得した可能性が高い」(同関係者)

 平昌冬季五輪閉幕直後に偽造パスポートが暴露されたことに、平壌情勢に詳しい関係者は「正恩氏はこれまで3、4月にミサイル発射実験を繰り返していた。今後は正恩氏をけん制する狙いで過去の個人情報が次々に暴露されるだろう」と話している。