「将来の女帝」金正恩妹“丸裸”作戦 平昌五輪舞台裏で情報戦

2018年02月09日 17時00分

金与正氏(ロイター)

 いよいよ開幕の日を迎えた平昌冬季五輪が、まさにとなってきた。韓国大統領府は8日、文在寅大統領(65)が10日に北朝鮮の高官代表団と会談すると発表した。北朝鮮代表団には金正恩朝鮮労働党委員長の実妹・金与正党第1副部長が含まれる模様。米・韓両国の情報機関が、秘密のベールに覆われた“女帝”の正体を明らかにすべく、現地で動くことになりそうだ。

 開会式前日の8日、北朝鮮が平昌五輪をメディアジャックした。スケート会場などがある江陵で玄松月団長率いる三池淵(サムジヨン)管弦楽団がコンサートを開けば、同地の選手村では美女応援団が急きょ北朝鮮の入村セレモニーに加わり、南北融和ムードを演出した。

 南北軍事境界線を隔てた平壌では、北朝鮮の軍創建70周年記念の軍事パレードが行われ、金正恩氏が演説。新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星15」が披露されるなど、その動向は海外メディアの注目を集めた。

 拓殖大学客員研究員で元韓国国防省北朝鮮分析官の高永チョル(コウ・ヨンチョル)氏は「新型大陸間弾道ミサイルの火星14、15号を公開したが、生中継はしない、外国メディアを規制するなど、昨年に比べれば粛々のパレードとなったのは、米国の顔色を見たからでしょう」と指摘。国内向けの引き締めが狙いだったとみられる。

 それもそのハズで、北朝鮮は平昌五輪を政治利用し、南北融和の演出に躍起となっている。この日発表された予定では、金永南最高人民会議常任委員長率いる北朝鮮高官代表団は、9日午後に平壌からソウルに専用機で来韓。同日夜の五輪開会式出席のほか、翌10日に文大統領とランチ会談を行い、11日に北朝鮮に戻る日程となっている。

 サプライズとなったのは、7日に突如韓国側に伝えられた金正恩氏の妹・与正氏の参加だ。金正日総書記と在日朝鮮人だった高英姫夫人の間に生まれ、幼少時に正恩氏とともにスイス留学していたとみられるが、詳細な経歴は不明だ。正日氏が亡くなった後から姿を見せ始め、正恩氏のサポート役に徹していたが、昨年に党政治局員候補に抜てきされて以降、急速に力を強めている。

 前出の高氏は「金正恩からの信頼が厚く、いまや事実上の右腕ともいえる。結婚していて、今年出産するのではないかとの情報がある」と指摘する。正恩氏の身に何かあれば、与正氏が後継者になるのではといわれているほどで、名目上のナンバー2といわれる金永南氏よりも格上になるという。

 与正氏については、人権侵害の恐れがあるとして米政府が独自の制裁対象に指定するなど、本来なら韓国に入国できないはずだが、韓国政府はもろ手を挙げて歓迎している。だが、米や韓国の情報機関が、正恩氏と血縁関係にあり、将来の女帝になるかもしれない人物をタダで帰すワケにはいかない。

「与正氏は1987年ごろ生まれとされるが、年齢も定かでないように、とにかく情報がない。そもそも本当に正恩氏の実妹かどうかも確たる証拠がない。今回の訪韓で、指紋や毛髪、DNAなど取れる情報を根こそぎ集めるのは間違いないでしょう」(公安筋)

 正恩氏は外出した際、排せつ物から健康状態などの情報がとられるのを警戒し、自前のトイレを用意するほどだというが、与正氏もトップシークレットとして、特別待遇となるのか。

 一方で、不測の事態も懸念される。韓国国内ではアイスホッケー女子の南北合同チームの結成や三池淵管弦楽団のコンサートなど、文政権の弱腰・親北姿勢に反対する勢力が連日、デモ活動を繰り広げている。8日も江陵の公演会場近くで保守団体が抗議集会を開き、警官隊と小競り合いとなる事態も起きた。

 もし、与正氏の身に危険が及び、暗殺されるようなことがあれば、南北融和どころか、南北開戦に陥りかねない危機を迎える。韓国、北朝鮮両政府は与正氏ら北朝鮮代表団を最重要警護対象として、2泊3日の滞在中は鉄壁のガードを敷くのは必至。情報機関やメディアはそのスキを縫って、一挙手一投足を追うことになりそうだ。

※チョルは「吉吉」