【センター試験】ムーミン出題の物議

2018年01月17日 07時30分

“悪問”なのか、それとも…。13日に実施された大学入試センター試験の地理Bで出題された“ムーミン問題”が物議を醸している。「ムーミン」の舞台に関する問いでフィンランドを正答としたが、ネット上では「ムーミン谷だ」と異論が噴出。ここに在日フィンランド大使館も「ムーミン谷は皆さんの心の中にある」と“乗っかった”ため、正解は「みんなの心の中だ!」と、訳の分からない展開になっている。そもそも、なぜこんな問題が出題されたのか? 専門家に聞いてみると――。

 ムーミンが取り上げられたのは、センター試験の地理B。スウェーデン、ノルウェー、フィンランドの北欧3国に関する設問で、スウェーデン発祥のアニメと同国の言語を例示した上で、ノルウェーとフィンランドが舞台のアニメ、両国の言語から、フィンランドのものを選ぶことを求めた。アニメの選択肢として「ムーミン」(フィンランド)と、「小さなバイキングビッケ」(ノルウェー)が示された。ムーミンは、スウェーデン系フィンランド人作家のトーベ・ヤンソン氏(2001年死去)の小説で、「フィンランドの作品」として認知されているが、「フィンランドが舞台」かどうかは不明。受験生からは「ムーミンの舞台はムーミン谷」などと異論が噴出。

 在日フィンランド大使館は広報担当者を通じて「ムーミンが注目されるのは、うれしい。ムーミン谷は物語を愛する皆さんの心の中にある」とコメントし、沈静化を狙ったようだが、逆効果。「ムーミン谷=皆さんの心の中」という理論が成立したことで、ネット上では「正解はフィンランドではなく『みんなの心の中』じゃないか!」と拡大解釈する者が続出している。ついには菅義偉官房長官も15日の記者会見で「そうした報道がされていることは承知している。大学入試の個々の問題なので、政府の立場でコメントすることは控えたい」と言及。大阪大大学院のスウェーデン語研究室も同日、ムーミン谷がどこにあるかは原作に明示されていないとして「舞台がフィンランドとは断定できない」との見解を発表し、大学入試センターに設問の根拠を問う方針を明らかにした。

 あまりに意外な形で巻き起こってしまったムーミン騒動。センター試験の社会的信用を維持するためにも真相の究明は必須ではあるが、採点となると話は別だ。

 ムーミン設問はバイキング=ノルウェーであること、フィンランド語がインド・ヨーロッパ系の言語ではないことを分かっていれば、ムーミンのことを知らなくても消去法で答えが導き出せる。「出題ミス」と散々バッシングされる一方で、「良問」と評価する声も多い。

 医学部受験専門「和田塾緑鐵舎」を主宰する精神科医の和田秀樹氏(57=顔写真)は「複数のヒントから答えを導き出せる問題だけに、出題ミス扱いにして『全員正解』の救済措置が取られるかどうかは微妙なところですね。難易度も、さほど高くはありません」と指摘。真偽の問われる問題が出題された背景については「はやりものや身近な社会現象を問題にするのが、昨今のセンター試験のトレンド。別の科目では、ゆるキャラが登場したといいます。(設問者の)おじいちゃんが単純に若者ウケを狙って、コケたようにしか思えませんね」と辛口だ。

 同氏によると、受験生に求められるのは「考える力」。センター試験は2020年1月で廃止となり、翌年から国語と数学に記述式問題が導入される「大学入学共通テスト」がスタートする。

「文科省の指針に倣い、今後ますます考える力が必要になってくる。教科書に出ていないが、考えれば解けるものや、新聞やニュースを見ていれば分かる問題が多くなるでしょう」(和田氏)

 確かにオジサン、オバサン世代には懐かしいアニメ主人公の登場で「気の利いた問題」と思えなくもないが、受験生たちにとってムーミンやビッケが、ふさわしいキャラだったかどうか…。