全国数店舗を展開する振り袖のレンタルや販売、着付け業者「はれのひ」(横浜市中区・篠崎洋一郎代表)が「成人の日」の8日、一部店舗を除き新成人から振り袖や着付けの代金を預かったままスタッフが着付け会場に現れずトンズラし、一生に一度の晴れ舞台に振り袖を着られなかった新成人が300人規模で続出した。ネット上には人生のビッグイベントを台無しにされた無念や、同社の夜逃げ同然の雲隠れを“計画倒産”だと非難する声であふれた。元従業員に話を聞くと、同社のあまりにズサンな経営内容が――。

「はれのひ」は2012年に直営店を横浜にオープン。ホームページによると現在は関東圏と福岡に4店舗を構える中堅の振り袖レンタル業者だ。ほかにも3店舗を開店しているが、入居先施設に名前はない。新成人の門出であり業者にとっても一年で一番の“書き入れ時”であるハズの成人式当日。店舗所在の所轄警察署には「店に誰もいない」「店と連絡がつかない」といった被害相談が相次いだ。ネット上では数十万円の被害報告も散見された。

 横浜市の成人式の着付け会場となった港北区のホテルによると、昨年末の期限までに同社から会場使用料が振り込まれず、5日に連絡を取った際には「予定通り(着付けを)実施する」と回答していた。だが、前日夜には衣装を搬入するのが通例なのに、同社からは誰も担当者が来ず、連絡も取れなくなったという。

 8日午後、商業施設に入る「横浜みなとみらい店」を訪れると、間仕切りで目隠しされた店内は照明もついておらずひっそり。ほかの店舗は通常営業する中、真っ暗な店先で警備員が2人態勢で買い物客を見張る異様な光景が広がっていた。同店は7日から営業していなかった。

 中区にある本部も“もぬけの殻”だった。

「2日前に久しぶりに人の出入りを見たが、もうここ数か月、稼働しているような様子はなかった」(近隣)という。

 同社の元従業員は「現時点で社員の8月分の給与も未払いで、スタッフの離職が相次いだので繁忙期に立ち行かなくなったのではないか」と推察する。

 従業員の賃金はここ4か月間未払いで、大量離職者が出ていた。それなのに昨年11月「オータムフェア」を開催。サービスを提供できる見込みもないのに営業活動を継続していたことから、一部では「計画倒産」の意図があった可能性も指摘されている。

 前出の元従業員は「代表はミエっぱりで、小さなことでも大きく話し、守れもしない口約束ばかり。口では『人を大事にする』と言っているが、社員を捨て駒のように扱っていた。営業職が長かったせいか口車に乗せることがうまく、人を洗脳しようとするところがありました」と怒りの表情で振り返る。

 確かに同社はホームページで「2020年までに100店舗を出店させていく」「LA、パリ、ミラノなどへの海外進出も見据えています」などと調子のいいことを書き連ねていたからあきれる。篠崎代表の強引で無理のある経営方針がたたってスタッフが離れ、被害者が膨らんだのは間違いなさそうだ。

「代表は50歳過ぎてから結婚し、まだ小さなお子さんもいたはずです」と同元従業員。我が子もいずれはハタチの門出を迎えるだろうに、従業員らを路頭に迷わせて逃げ回った揚げ句、多くの新成人らの晴れ舞台を奪った罪は重い。