「保毛尾田保毛男」問題で注目されたLGBTの本音

2018年01月02日 17時00分

大久保暁氏(右)と妻・希望(のぞみ)さん

 性的マイノリティーを意味するLGBTがにわかに注目を集めている。2017年9月28日に放送されたバラエティー番組「とんねるずのみなさんのおかげでした」(フジテレビ系)で、石橋貴明(56)扮するキャラクター「保毛尾田保毛男」が28年ぶりに登場すると「男性同性愛者をやゆしている」とネットで炎上。放送した同局は謝罪に追い込まれた。だが、そもそもLGBTとは何なのかはあまり知られていない。そこで性的マイノリティーの啓発活動「暁project」を主宰し、自身もトランスジェンダーの大久保暁氏(36)に話を聞いた。

「ゲイ」と「おかま」と「ホモ」はどう違うのか。しっかりと説明できる人は意外に少ないかもしれない。いずれも男性同性愛者を意味するが、ニュアンスは異なる。

「おかま」と「ホモ」は、歴史的に差別の意味を伴って使用されてきたため侮辱に当たる。その場合「ゲイ」と称した方が正しい。「レズビアン」も「レズ」と略すとやはり差別的になるので「レズビアン」。ややこしいかもしれないが、複雑にしているのはこれまで差別されてきた背景があるからだ。

 2016年からLGBTを広く世間に知ってもらおうと講演や情報発信などを行う大久保氏がこう話す。

「確かにだいぶ世間の雰囲気は変わってきましたが、いまだに就職に不利になったり、奇異な目で見られることは少なくありません。理想を言えばLGBTという言葉がない方がいいんです。でも、すぐにそういうわけにもいきません。その存在を知ってもらうことからしていきたい」

 大久保氏自身、女性の体で生まれ男性の心を持つ、トランスジェンダーだが、最初から自分がLGBTだと認識していたわけではない。知らなかったため長年苦しんできた。

「小6で女の子に初めて恋をしたところ『レズなんじゃないの?』という噂がクラスに広がり、心を閉ざすようになりました。自分の頭はおかしいから、気持ちにふたをしようと。この時は自分が何なのかよくわかりませんでしたね。中高は女子校に通いましたが、スカートがイヤでイヤで…。でもバレたくない。友達との恋愛トークもウソで固めていましたね」

 初めて女性と交際したのは大学1年のとき。相手は同級生だったが長続きはしなかったという。

「どう付き合っていいかわからないんですよ。2~3か月ですぐ別れてしまいました」

 転機になったのは20代後半になってからだった。女性と交際を重ね体の違和感としっかり向き合った結果「男性として生きていこう」と決意。11年にホルモン治療を始め、乳腺、子宮の摘出手術を受けた。13年には戸籍を変更し、現在は知人の紹介で知り合ったLGBTではない一般女性と結ばれ、幸せな結婚生活を送っている。

 そんな大久保氏はLGBTの生きづらさをこう語る。

「例えば、私のようにホルモン注射を打っている人は、生命保険に入りにくいんです。なぜなら投薬に当たると言われた。また、病院に行くのもためらってしまう人が少なくありません。自分の名前をフルネームで呼ばれるじゃないですか。女の名前なのに、ヒゲ面の男が立ち上がったら変な目で見られかねません。そしてトイレも問題。女子トイレに入ると男性に間違われてしまう。かといって男子トイレに入るのもためらってしまう。なので、ぼうこう炎になるトランスジェンダーの方は多いんですよ」

 最後に、騒動になった「保毛尾田保毛男」に関しても、こう声を大にした。

「もう今の時代には合っていないと思います。イヤな思いをした方もいらっしゃったことでしょう。学校でイジメに遭う可能性だってある。表現の自由といっても限度があるんじゃないかと。こんなこと言うと『クレームばかり言う』と思われるかもしれませんが、私たちは権利ばっかり主張しているわけではありません。そもそもそのことでつらい思いをしている人がいることを知ってもらいたい」

【LGBTとは】L=レズビアン(女性同性愛者)、G=ゲイ(男性同性愛者)、B=バイセクシャル(性的指向が男女共にある者)、T=トランスジェンダー(体と心の違和感・不一致感を持つ者)の略。ほかにもさまざまな性的指向はあるが、国際機関などで性的マイノリティーの総称として用いられることが多い。