呪術師がバリ島火山泥流の中で守護パワー儀式「あの世が見えた」

2017年12月29日 08時00分

【アツいアジアから旬ネタ直送「亜細亜スポーツ」】11月21日、約半世紀ぶりに噴火したインドネシア・バリ島のアグン山が、クリスマスイブの24日に再噴火した。地元民7万1000人以上がいまだ避難生活を続け、インドネシア政府は観光地には影響がないとし、ジョコ大統領(56)も「バリ島は安全」と訴えているが、観光客は激減。年末年始の書き入れ時なのにホテルや飛行機もキャンセルが相次ぎ、島の基幹産業は大ダメージだ。

 バリ島はイスラム教が大半を占めるインドネシアにあって、バリ・ヒンズーという独特の宗教を守っている。土着の宗教と、インドから入ってきたヒンズー教が交じり合ったもので、神々への祈りの儀式を至るところで目にする。

 世界的リゾート地とは思えぬオカルトチックな一面があり、魔術を操る者も少なくない。病院に代わる、ヒーリングや占星術、祖先の霊の降霊、遠視、悪魔ばらいなどができる“能力者”が島民を守っている。

 バリ・ヒンズーの司祭で、呪術師のような役割を果たす「マンクー」もそんな存在。島民たちは何か悩みごとがあったり、進学や就職、結婚など人生の分岐点に差し掛かると、マンクーの元を訪れて悩みを相談し「ムルカット」という清めの儀式を受ける。マンクーから祈りを込めた聖水を掛けてもらうと、けがれが払われ、心の曇りが晴れるという。

 この儀式は、島内各地にある清流などのパワースポットで行われることが多いが、アグン山の噴火口から流れ出る火山泥流に自ら身を浸し、ムルカットを行うマンクーが最近、現れた。男性マンクーのジェロ・クンシールさんが、上半身裸で激しい泥流に身を躍らせ、花をささげ、全身を浸し、ひたすら祈り続ける様子をキャッチしたのは地元紙「バリ・トリビューン」だ。

 アグン山から放出され、だいぶ距離のある場所を流れる火山泥流なので、灼熱ではないものの、多量の火山灰を含んでいるため非常に重い。また噴火で飛ばされてきた火山岩や噴石も流れている。場所によっては流れが速く、危険極まりない行為だが、神のご加護か、儀式を無事終えたジェロさんは、同紙に「泥流からは非常に強いエネルギーを感じた。ニスカラ(あの世)が見えた」と語った。

 それもそのはず。アグン山はバリ・ヒンズーの聖地で「火の山」と呼ばれ畏れられている。山の溶岩には守護の力があるとされ、実際に科学者が成分を分析したところ、大量のミネラルが含まれていることがわかった。免疫力増強や新陳代謝に大きな効果が期待できるという。バリの神秘は科学に裏打ちされているのだ。

☆室橋裕和(むろはし・ひろかず)=1974年生まれ。週刊文春記者を経てタイ・バンコクに10年居住。現地日本語情報誌でデスクを務め、3年前に東京へ拠点を移したアジア専門ライター。最新著書は「海外暮らし最強ナビ・アジア編」(辰巳出版)。