大宮・風俗店火災の阿鼻叫喚 “密室状態”で被害拡大か

2017年12月18日 17時30分

火災発生直後のソープランド(近隣住民提供)

 埼玉県さいたま市大宮区のソープランド「Kawaii大宮」で17日午後2時ごろ、火災が発生し、男性6人、女性5人が搬送され、そのうちの40~50代とみられる男性1人と、20代ぐらいの女性2人が死亡した。女性1人が重体で、7人は軽症とみられる。ほかに性別不明の1人の遺体が見つかった。窓がほとんどない“密室状態”で被害が拡大した。いまだ絶えない風俗店での火災がまたも阿鼻叫喚の悲劇を生んでしまった。

 現場となったソープランドはJR大宮駅から北へ500メートルほどにある大宮北銀座(通称キタギン)の風俗街にあった。20軒ほどのソープランドや数軒のヘルスが立ち並び、県内では西川口に並ぶ“風俗の聖地”として知られていた。

 さいたま市消防局によると、同店は鉄筋3階建てのビルで、1階と2階に従業員の女性がサービスを行う個室がそれぞれ5部屋ずつあり、3階には客の待合室と従業員の休憩室があった。

 火災発生時は風が強く、現場周辺は煙に包まれた。近所のソープランド従業員の男性は「うちの店のお客さんが入店される時に、自動ドアが開く度に焦げくさい臭いがして、店の個室まで臭いが漂っていた。受付のスタッフが騒がしくなって、14時半ごろ店の外へ出たら、黒い煙が見えた。嗅いだら気持ち悪くなった」と話す。

 同店のホームページによれば、この日は19人の女性従業員が出勤予定で、火災発生時は11人が出勤中となっていた。別の風俗店の男性は「店の料金はこの地域だと安い方。その割に雑誌のランキングでは上の方だった」と人気ぶりを語る。

 黒煙と炎に包まれた建物からは、髪の毛がこげた男性やススで顔が真っ黒になったり、裸足のまま毛布でくるまった男女などが道路に座り込んでいたという。

 死傷者の2人が搬送される一部始終を目撃した男性は「ソープ嬢っぽい人の体は、くたっとして、顔の半分はドロドロでした。もう1人が搬送される時は、ブルーシートがかぶせられていた」と振り返る。ビル3階でうつぶせの状態で発見された遺体は炭化し、性別が特定できないほどだった。

 出火元の隣の風俗店の従業員は「ボイラーが爆発したような音を聞いた」。営業届で出されていた店の図面ではボイラー室は1階にあったが、消防局は「2階と3階の延焼が大きい。1階はほとんど燃えていないので出火原因ではなさそうだ」として、出火元は調査中としている。爆発したのは3階にあったボイラータンクとみられる。

 元東京消防庁消防官で防災アナリストの金子富夫氏は「爆発音があったのは大きなポイントだが、少しずつ延焼して、タンクが爆発したか、何かタンクに直接爆発物が投げつけられたかは調べないと分からない」と指摘する。現場では、火災発生直後、放火されたのではないかとの臆測も広がったようだ。

 なぜ大惨事となってしまったのか。消防局は昨年6月、消防法に基づき、同店を立ち入り検査し、避難経路に障害となる物があるとして改善を指導した。その後、速やかに是正されたという。この建物を管理する男性は「店の者と連絡を最近とっていない」という。

 建物は築60年近くとみられ、エレベーターや屋外階段はなかった。

「内部は狭い、暗い、余計な置物、間仕切りも多く、迷路のようになっていたのでしょう。ほとんど窓がないため延焼が激しく、濃煙と熱気が瞬く間にビル内に広がったのでしょう。一酸化炭素中毒による死亡、または一酸化炭素中毒からの焼死とみられます」(金子氏)

 雑居ビルの火災では、2001年に東京・歌舞伎町でセクシーパブの従業員や客ら44人が死亡。08年は名古屋のヘルス店での火災で、店長ら3人が死亡。同年、札幌のソープランドでの火災では客と従業員の男女3人が死亡している。ずさんな管理体制や建物の老朽化などが問題となっていた。

 思わぬ火災に巻き込まれた場合、どうすればいいのか?「店に入った後、部屋までの通路や窓、非常口を確認することです。もし火災が発生した場合は開口部を見つけることができれば、素早く外へ避難するしかありません。たとえ裸だったとしても恥も外聞もありません。まず逃げることです」(金子氏)。火災はいつどこで起きるか分からない。自分の身は自分で守るしかない。