羽田空港新ルートで白金マダム悲鳴 重大事故リスクに資産価値低下も

2017年12月14日 17時00分

東京湾アクアラインの入り口付近を通過する航空機

 国が2020年東京五輪前をメドに、増便を図り東京・大田区の羽田空港に離発着する便の新飛行ルートを導入する。新たに陸ルートを解禁し、新宿や渋谷、品川など都心部の上空を航空機が低空飛行で通過することになる。通過する地域での騒音や落下物への懸念はもちろん、不動産の資産価値低下など、さまざまな問題に直結しそうだ。大都市の住民や働く人々との大モメは必至だが、それでも国は強行突破するのか。

 新飛行ルート導入は東京五輪に伴い、外国人旅客者の受け入れを増やすため。羽田空港のA滑走路とC滑走路に北側からの着陸(南風時)で、4本ある滑走路が効率的に使用できるようになり、現行で年間6万回の離発着が約1・7倍の9・9万回、旅客者数は年間で705万人の増加と見込んでいる。

 離発着で複数ある新ルートの中、北側ルートが最も問題視されている。着陸の際、飛行機は滑走路に向かって直線状に高度を下げ、降りて来る。A滑走路使用時は中野(高度1050メートル)、渋谷(600メートル)、大井町(300メートル)、C滑走路時は新宿(900メートル)、白金高輪(600メートル)、品川(450メートル)の駅上空を通過する。

「テレビでも報じられ、白金マダムや品川の高級住宅地の奥さんたちの間ではこの話題で持ち切りですよ」(地元関係者)

 なかでも大井町は、高さ333メートルの東京タワーよりも低い位置を飛行機が通過することになる。便数は午後3~7時の間で、ピーク時には1時間に44回になるとも。

 これだけの低空飛行で騒音はどうなるのか? 国土交通省で公開しているシミュレーションを記者が体験してみた。高度900メートルはそれほど気にはならなかったが、600メートルから激変。窓を開けた状況では60dB(デシベル)で「ボゥーォ」というエンジンのうなり音で周りの音は一時遮断される。450メートルの屋外では70デシベルで隣の人との会話も難しくなる。

 飛行ルートは都心の一等地で人気エリアの上空だ。不動産の資産価値に影響は出ないのか?

 国交省は「音などの感じ方については個人差もあり、飛行機の飛行経路と不動産価値の変動との間に直接的な因果関係を見いだすことは難しい」としている。

 だが「榊マンション市場研究所」主宰の榊淳司氏は一笑に付す。

「本当にうるさければ影響は免れません。目安としては50デシベルなら問題ありませんが、60~70デシベルとなれば賠償問題となってくる。品川のタワーマンションはリニア開通を当て込んで値段が上がってきて、築10年以内、20階なら坪300万円前後ですが、1割ぐらい下がりかねない」と話す。飛行ルート下のタワマンでは不安の声が高まっている。

 また、9月に大阪や茨城で飛行機の部品が落下し、問題となった。降下時は格納している車輪を出すため、付着していた氷が落ちてくる危険もある。国交省は過去10年で落下物は成田空港では19件、羽田空港周辺は0件としているが、反対派住民は「羽田の離発着は東京湾を出入りしているからで、海に落ちたのに気付いていないだけ」とあきれる。

 大田区在住で、1982年に起きた日航機の逆噴射墜落事故で救助活動に当たった元東京消防庁消防官の防災アナリスト・金子富夫氏は「高層ビルが立ち並ぶ都心を低空飛行で通過するのはパイロットにかかる精神的負担が大きすぎる。世界的にも都心は飛ばないようにしているのに逆行している。逆噴射事故は(航空機が)滑走路手前の海に墜落したが、新ルートで同じようなことになれば、街中で大惨事になる」と指摘する。

 一度、試験飛行でもあれば、騒音が体感できるとあって理解も深まりそうだが、国交省側は「フル稼働している羽田空港の現行の運用を一定時間停止する必要がある」として、困難という。このまま、ぶっつけ本番で運用したら各地で住民訴訟の嵐となるのは間違いない。