中国共産党の習近平総書記(国家主席)の特使として北朝鮮を訪問した宋濤中央対外連絡部長が20日、帰国した。中国国営通信の新華社は、その有無が注目された金正恩朝鮮労働党委員長との会談には触れなかった。宋氏が「朝鮮労働党の中央指導者と会談した」と報じたが、誰と会ったのかは明らかにしていない。

 中央対外連絡部によると、宋氏は訪朝初日の17日に正恩氏最側近の崔竜海党副委員長と、18日には朝鮮労働党で国際部門を統括する李洙墉副委員長とそれぞれ会談した。

 平壌情勢に詳しい関係者は「北朝鮮は海外からの要人や芸能人、スポーツ選手などを手厚く歓迎する。VIP歓迎の席には正恩氏が出席する。宋部長は非公式に正恩氏と会談した可能性があります」と指摘した。

 仮に会談していたとすれば、正恩氏が中国側に伝えたのは何か。

「北朝鮮が核実験をやる目的は金ファミリー体制の保持だ。核開発を放棄するような弱腰姿勢の首領であれば、朝鮮人民軍がクーデターを起こしかねない。だから、中国経由で米国に『金王朝体制の保証を得られるなら、核開発に手を出さない』と伝えたとみられます」(同関係者)

 そんな中、トランプ米大統領(71)は20日、北朝鮮を再びテロ支援国家に指定すると発表した。

 米国政府は1998年に北朝鮮をテロ支援国家に指定。2008年に当時のブッシュ大統領(71)が同指定を解除した。

 日本の政府関係者は「米国は、人民を抑圧し核開発やミサイル発射を繰り返す金ファミリーを承認していない。トランプ氏は9年ぶりに再びテロ支援国家の指定に踏み切った。北朝鮮はこれまで以上に強い反発をしてくるだろう」と話す。

 日米両首脳は急激な武力拡大を続ける正恩氏に「今は圧力を加える」という姿勢で一致している。

「“今は”という意味は、今後は圧力以外の方法があるという意味に受け取れる。米韓による金正恩氏への斬首作戦の決行ということです」と同政府関係者は指摘した。