大分県弁護士会は7日までに、県北部の出身地の集落にUターンした男性の世帯に対し、集落全体で「村八分」をしているとしてやめるよう是正勧告をしたと発表した。

 弁護士会によると、男性は2009年に関西から同県の14世帯の集落にUターンし就農したが、11年ごろ、農地開拓の補助金の支払われ方に疑問を呈し、集落の住民とトラブルになった。

 以降、集落は会議を開き男性を自治会の構成員に入れないと決定。

 その後、男性は「農家にとって重要なイベントである豊作祈願などの行事に参加させてもらえない」「『農業の資格がない』と言われ、田んぼの下水路の掃除をさせてもらえない」などの「村八分」を受けたという。

 男性の申し立てを受け、大分県弁護士会の人権擁護委員会が仲介に入ったが、集落側が「(集落)全員の賛同がないので構成員として認められない」と主張したため、同会が自治会長に人権侵害を指摘し平等に扱うよう勧告を送付した。

 委員会によると、同県で「村八分」に関する勧告は県内で過去に2例あり、今回が3例目。松尾康利委員長は「都会から来た人は権利意識があるので、長老の顔色をうかがわずに自分の意見を通そうとする傾向がある。すると、集落の人は『以前からいる俺たちの言うことが聞けないのか』と、のけ者にしてしまうことがあるのです」と話す。

 UターンやⅠターンでの都会から田舎への移住がブームだが、「長老の手伝いを断った」「行事へ参加せず付き合いが悪いと思われた」「道路拡張など改善策を提案した」といったささいなことをきっかけに住民と対立し「村八分」にされてしまうケースは多い。集落との話し合いや調停を進めても実際に解決されることは少なく、都会に出戻りしてしまうか、孤立したままとどまるしかない人もいるという。

 松尾委員長は「過疎化している地方の集落では、若い世代の人が移住してきてくれるだけでありがたいはずなのに、今回のように対立してしまうことはお互いのデメリットにしかならないでしょう」と指摘している。