タイ前国王の追悼式で“赤服狩り”騒動

2017年11月03日 09時00分

【アツいアジアから旬ネタ直送「亜細亜スポーツ」】タイのプミポン前国王の火葬式(先月26日)では、首都バンコクの王宮周辺に約35万人が詰めかけ、タイ全土でもバンコクの火葬施設を模した建造物に計約1900万人が足を運んだ。現地では葬儀に対する妨害工作の可能性も報じられたが、納骨式(同29日)まで滞りなく終わり、1年に及ぶ喪が明けた。

 その裏で、葬儀に際し黒い服を着ていない人の写真をネットでさらすという行為が続出。現地記者が明かす。

「特に標的となったのは、タクシン派のイメージカラーである赤い服の人。現在国外逃亡中のタクシン元首相は、王室の存在を脅かすものとして、現軍事政権を支持する反タクシン派から国賊扱いされている。服喪期間で、しかも葬儀の最中に赤を身につけるとは何事かというわけ」

 タクシン派と見なされた人のフェイスブックは次々に荒らされた。また「嫌いな人の写真を加工しネットに載せる連中まで出てきた。写真で着ている喪服を赤く画像加工し、王室を侮辱していると叩く手口」とは同記者。

 すると今度は、赤服を着ている人を続々とさらす“赤服狩り”を逆に狩るやからも現れた。SNSを調べ上げ、政治的主張とは無関係に赤い服やアクセサリーを身につけている写真をあげつらい「コイツもタクシン派だった」と叩くのだ。

 騒動はタイ人が多く住み、各地で追悼式が行われた米国でも。ロサンゼルスでの追悼式に参加したタイ系米国人で、アジア系米国人の地位向上を目指す団体「アジア・ヘリテージ・ソサエティー」会長ロザリン・カルメンさんの格好が問題視された。

 式の前、カルメン会長が自身のフェイスブックに投稿した写真(現在は削除)は、黒が基調の服だがところどころ赤や緑の花柄があしらわれ、手には真っ赤なバッグ。これに在米タイ人がかみつき、会場に現れた会長を群衆が取り囲み「コイツは赤だらけだ!」と非難した。「政治とは無関係に赤が好きで、普段から赤いものを身につけている」という弁解もむなしく、会長は会場を追い出された。

 フェイスブックも大炎上。タイ本土から罵倒の書き込みが殺到し、今もやむ気配がない。中には拳銃の写真をタイムラインにアップする者まで。ヒザ上丈のミニスカ姿なども「いい年こいて何考えてるのか」「葬儀では肌を見せないのが常識」「化粧も濃くて下品」と格好の糾弾ネタにされた。会長は弁護士に対応を相談するとしているが、米政界に影響力を持つ人物だけに国際問題に発展するかもしれない。

 いずれにせよ、国父も天国で泣いていることだろう。

☆室橋裕和(むろはし・ひろかず)=1974年生まれ。週刊文春記者を経てタイ・バンコクに10年居住。現地日本語情報誌でデスクを務め周辺国も飛び回る。3年前に東京へ拠点を移したアジア専門ライター。