ヒアリのように本州侵攻あるか悪魔の外来生物「ヒモムシ」

2017年10月04日 07時15分

ハゴロモを捕食するヒモムシ(撮影者・森英章)

 不気味な“悪魔の外来生物”が、美しい島の自然を破壊している――。世界自然遺産・小笠原諸島の生態系を破壊している元凶が、外来生物の陸生ヒモムシであることを東北大学大学院生命科学研究科の修士課程1年生篠部将太朗氏(22)らのグループが突き止めた。2日、東北大が発表した。あまり聞き慣れないこのヒモムシは、とんでもなく気持ち悪い生物だ。

 小笠原諸島の森林では、ワラジムシ類とヨコエビ類が森の落ち葉などを細かくして、細菌やカビによる分解を助けている。ところが、その後の調査でこれらの生物が急速に減少。父島ではほぼ消滅、母島でも激減した。

 篠部氏らはワラジムシとヒモムシの分布域に相関性があったことから、“犯人”を推定。昨年7月から40日間の調査を行い、外来種のヒモムシを容疑者として特定したのだった。動画では、口から出した細長いヒモ状の「吻」を素早く獲物に刺し、体液をチュウチュウ吸っている様子が確認できる。陸生ヒモムシがワラジムシ類などを捕食し、生態系の大きな脅威となることが示された世界初の事例だ。

 小笠原は貝や虫など固有種が豊富な土地。1981年にこのヒモムシが父島で初めて確認されてから、希少種が着々と食い荒らされていたのだ。

 篠部氏は「工事の資材や観葉植物などを持ち込んだときに、植物についていたことなどが侵入経路の有力な仮説です」と話す。

 ヒモムシが食べてしまったことで、ワラジムシの上位捕食者のカメムシの一種も減った。土壌のpH値や、植栽に与える変化も危惧される。生態系を乱す、憎い外来種なのだ。父島に続いて、母島の制圧も近そうだ。

「今のところ、母島の南部への侵入速度を緩和させるしかない」(篠部氏)

 さらに、篠部氏によると未確認情報ながら「ヒモムシに刺されたと言っている人もいる」という。ヒアリのように、本州に侵攻してこないか気になる。「熱帯・亜熱帯に分布しているので沖縄にはすでに生息しています。本州に来ることはないでしょう。しかし、九州はあるかもしれません」(篠部氏)

 そんなヒモムシにも弱点はある。「海水につけると徐々に衰弱死します。また、食酢のスプレーをかけても死にます」(篠部氏)。絶滅させるには至らないが、拡散防止には役立つそうだ。小笠原の兄島と弟島への侵入状況は詳しくはわかっていない。貴重な森林生態系を守るため、対策が必要だ。