タイ女性がヒアリ見て「おいしそう」!?バンコクの食虫事情

2017年09月29日 07時30分

クロントイ市場の虫売りオバサン

【アツいアジアから旬ネタ直送「亜細亜スポーツ」】日本を今夏パニックに陥れた“殺人アリ”ヒアリは、今年5月に中国・広東省から神戸へ入港した貨物船の積み荷から初確認。以降、各地の港や埠頭で大量に発見され、日本国内で繁殖の可能性が指摘されている。

 報道は下火になりつつあるが、今月15日には北九州港での発見が発表され、18日には岡山県笠岡市で女王ヒアリが確認された。既に11都府県に拡大し、かまれてケガ人も出ている。秋から冬にかけ越冬可能といわれ、そうなるとさらなる繁殖と日本での定着が進む。

 そんなヒアリ報道を見て「大きな体格で食べ応えありそうだし、卵も立派。きっとおいしい」とは、東京・湯島のタイパブで働く女性。故郷のタイ東北部イサーンでは、アリを日常生活で常食していたそうだ。

「日本だとタイ食材店でも手に入らないけど、一番人気はヒアリと同じように赤い色をしているモッデーン(赤アリ)。この卵を食べるの」

 モッデーンはタイ全土の森林地帯に広く生息し、マンゴーの木にもよくいる。その女王アリが抱えた、ラグビーボールか芋虫のような形をした全長5ミリほどの卵は「カイ・モッデーン」と呼び、料理に使う。炒め物に入れるとクリーミーで、やや脂っこくネットリした味わいに。卵焼きに交ぜたり、そのまま炒めて酒のさかなにする人も多い。ハーブと一緒に煮込んだスープも好まれている。

 アリ自体も食べる。とりわけ女王アリ(メーペーン・モッデーン)は体長1センチ以上あって食べでがあり、卵以上にプチプチしていて生々しい。モッデーンはアリが持つ毒の一種、蟻酸の濃度が特に強いため、「料理に酸味をつけるのにいい」と言われる。トムヤムクン、タケノコのスープなどの隠し味に使うことも。

「バンコクの台所」といわれるクロントイ市場には、食用の虫コーナーもあり連日盛況だ。アリのほかバッタ、タガメ、イモムシなどが並び、虫売り業者の仕入れ場所でもある。モッデーンはザルに山盛りで売られている。「イサーンのウボンラチャターニー産だよ。卵は冷蔵しておけば4~5日持つけど、鮮度が勝負だから早めに食ってくれ」と売り子は言い、値段は約10センチ四方のビニール袋いっぱいで100バーツ(約340円)ほど。

 イサーン出身のタイ人と結婚し、バンコクで暮らす日本人は「ウチの子供たちもアリは好物。食卓には普通に出るよ」と明かす。確かにアリはタンパク質をはじめ栄養が豊富で“未来食”の一つとして注目されている。

☆室橋裕和(むろはし・ひろかず)=1974年生まれ。週刊文春記者を経てタイ・バンコクに10年居住。現地日本語情報誌でデスクを務め周辺国も飛び回る。3年前に東京へ拠点を移したアジア専門ライター。