また日本列島が“狙われた”――。菅義偉官房長官は15日の記者会見で、午前6時57分ごろ北朝鮮西岸から1発の弾道ミサイルが北東方向に発射され、7時4分から6分ごろ、北海道上空を通過したと明らかにした。襟裳岬の東約2200キロの太平洋上に16分ごろ落下したとみられる。これにより北海道と東北6県など計12道県を対象に全国瞬時警報システム(Jアラート)が作動した。発射地域から飛行経路、Jアラートの対象地域まで8月29日の発射とほぼ同じ。男子プロゴルフ大会や競馬の調教にも影響が生じたミサイル発射。その意図は何なのか。

 北朝鮮のミサイル発射は、北海道上空を通過し襟裳岬の東約1160キロの太平洋上に落下した8月29日以来。今年に入って14回目となる。韓国軍合同参謀本部によると1発で、飛行距離は約3700キロとみられる。同本部は北朝鮮のミサイル発射を受け、弾道ミサイルの発射訓練を実施したと発表した。

 安倍晋三首相がインド訪問から帰国直前の発射。菅官房長官は記者会見で「北朝鮮による度を越した挑発行動を断じて容認できず、厳重に抗議を行い、最も強い言葉で非難した」と述べた。国内での被害は確認されていないが、北海道新幹線や札幌市営地下鉄のほかJR東日本などで運行を一時見合わせに。影響はスポーツ界にも及んだ。

 北海道・北広島市の札幌ゴルフ倶楽部輪厚コースで開催されていた国内男子ゴルフツアー「ANAオープン」では、午前7時に2日目のラウンドの第1組がスタートする直前にJアラートが発令された。

 すぐさま競技は中断となり、選手や関係者、さらにコース内にいたギャラリーはクラブハウス内に避難して状況を見守った。その後にJアラートが解除されると、40分遅れの午前7時40分から競技は再開された。

 また8月29日と同様にJアラートの対象となった茨城県では、美浦トレーニングセンターで調教に影響が生じた。午前7時ごろに職員や取材記者らの携帯電話を通じてアラートが伝達され、7時1分にミサイル発射が場内にアナウンスされた。調教コースの入り口が閉められ、馬のコース入りを見合わせに。北海道上空を通過後の同8分ごろに入り口閉鎖が解除され、通常の調教に戻った。8月29日の発射でも、札幌競馬場での調教が一時中断されている。

 9日の建国記念日には軍事的挑発行動に出なかった北朝鮮だが、新たな発射の兆候を米情報機関などが確認していたとの情報が流れていた。

 それにしても、北朝鮮側は「成功」としていた前回の発射となぜ同じような飛行経路をとったのか。グアム周辺海域への発射計画があるとして以降、同じ「太平洋」とはいえまったく異なる方向へミサイルを向け続けている。

 国連安全保障理事会は11日、北朝鮮に対する石油供給制限に初めて踏み込んだ制裁決議を採択。北朝鮮外務省は「全面的に排撃する」と反発していた。同国の朝鮮アジア太平洋平和委員会に至っては、決議採択が「卑劣な国家テロ犯罪だ」として、米国や追従勢力に対して軍隊や国民が「報復の一念に燃えている」とする報道官声明を発表。さらに「日本列島の4つの島を核爆弾で海に沈めるべきだ」との声が出ていると威嚇した。

 それを考えると“トーンダウン”の感もある今回の“北海道狙い”。前出の制裁決議では、北朝鮮に対する石油の全面禁輸の制裁案を、中国とロシアへの配慮から米国側は見送っており、かねて主張している「最強の制裁」へのいわば寸止め状態にある。北朝鮮が前出のような勇ましい言葉通りにグアムなどに向けた発射を行えば、さらなる窮地に立たされる。それも見越して、まだカードを残しているということなのか――。