ミャンマーの少数民族ロヒンギャ弾圧の複雑背景

2017年09月15日 08時00分

焼き打ちにされるスー・チー人形(ロイター)

【アツいアジアから旬ネタ直送「亜細亜スポーツ」】ミャンマー西部ラカイン州で少数民族ロヒンギャ弾圧が起き、30万人ともいわれる難民が発生。

「アジア最大の難民集団」と呼ばれる彼らは130万人ほどいるとされるが、ミャンマーでは人権が一切与えられていない。かねて差別や虐待の対象となっており、昨年からは軍による組織的な民族浄化が進んでいる。

 アウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相(72)はこの問題を無視。軍による虐殺を黙認していると国際的な非難を浴びている。過去に贈られたノーベル平和賞を剥奪すべきとの意見もあり、ネット上では署名活動も行われ、5万人以上が参加した。

 ただ、ミャンマー人からすると彼らは不法移民。旧首都ヤンゴン在住記者によれば、国内ではこんな論調だという。

「諸外国は歴史的背景も知らずロヒンギャの肩ばかり持つが、彼らはもともとバングラデシュから勝手にやって来て住んでる移民。植民地時代、英国がバングラデシュから連れて来たり、その後の軍事政権時代に経済難民として流入してきた。土地や国籍を与える必要は全くない」

 ミャンマーは仏教国だが、ロヒンギャはイスラム教徒だ。IS(イスラム国)のイメージからイスラムへの反感も高まっており「職場ではイスラム教徒を雇ってほしくない」「親族がイスラム教徒と結婚すると言ったら絶対に反対する」という声も。「イスラム教徒はどんどん子供を産んで人口を増やす。よその国から来ておいて、このままじゃ、ラカイン州は乗っ取られてしまう」とまで言う人も珍しくない。

 焼き打ちされたロヒンギャの村の様子などが報じられているが「彼らが被害者を装うため、自ら放火している動画もSNSで拡散されている。こういう情報は海外でほとんど報道されない」と憤る地元民もいる。

 事態は深刻になりつつあり、国連は懸念を表明し、現地立ち入り調査を求めたが、スー・チー氏はこれを拒否。国際社会では非難を浴びているが、国内では広く支持されている。「彼女はたとえ国際社会での立ち位置が悪くなっても、ミャンマー人の立場を代弁してくれた。国連は不公平で、初めからロヒンギャ側に立っている」という声が地元では多いという。

 双方に言い分はあるが、実際多くの人々が命を落とし、家を失い、難民として逃げ惑っているのは確か。

 ロヒンギャ側はARSA(アラカン・ロヒンギャ救世軍)という武装組織でミャンマー軍に対抗している。「ARSAのバックにいるサウジアラビアとパキスタンが資金を出している。またISが接近しているという話もあり、軍は警戒している」(地元記者)。

「10日から停戦」と発表されたが情勢は不透明だ。

☆室橋裕和(むろはし・ひろかず)=1974年生まれ。週刊文春記者を経てタイ・バンコクに10年居住。現地日本語情報誌でデスクを務め周辺国も飛び回る。3年前に東京へ拠点を移したアジア専門ライター。