北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の挑発暴走が止まらない。朝鮮労働党機関紙、労働新聞は4日、「水爆実験」とする3日の核実験について、実施命令書に署名する正恩氏の写真や平壌市民の歓喜の声を掲載するなど大きく報じた。さらに今回の「水爆」は、世界を「石器時代に戻す」という恐ろしい電磁パルス(EMP)攻撃能力もあるとしている。国際的制裁が強まることを承知の上で、暴走し続ける正恩氏の思考回路を分析すると、トランプ大統領とのチキンレースのおぞましい結末が見えてくる――。

 労働新聞は1面に、水爆実験に「完全に成功」したと発表した核兵器研究所の声明を掲載。同紙はまた、今回の「水爆」が持つと主張するEMP攻撃能力に関する専門家の解説記事も紹介している。EMPにより通信施設や電力系統が破壊されると説明し「一つの重要な攻撃方式と認定されている」とした。

 軍事事情通は「アメリカが核より恐れているのがEMPです。核兵器を高高度で爆発させることで、広範囲の電子機器が無力化するのです。韓国の報道では、アメリカの400キロ上空で爆発すれば、アメリカ全域の自動車、銀行、軍のシステム、病院などが機能停止に陥り、事実上“石器時代に戻る”とまで言及しています」と語る。

 高高度で爆発させるだけで効果があり、ピンポイントで着弾させる必要なし、というのが恐ろしいところ。米国がコンピューター制御のどんな最先端兵器を持っていようが、無効化してしまう。

 それどころか、現代社会はあらゆる分野で電気に依存しているため甚大な被害が予想される。

 電力・通信インフラが破壊されると大規模な停電が発生し、電子制御されている輸送インフラも機能停止、食糧や燃料の供給にも支障が出る。電源を失った原発が制御不能に陥ることも心配される。つまり、文明が崩壊してしまうわけだ。これは、トランプ米大統領(71)にとってとてつもない脅威に違いない。

 日本政府関係者は「北朝鮮は、北米大陸に到達する大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発を進めている。そこに核弾頭が搭載可能な状態になると、北朝鮮は米国にとって現実的な脅威になる」と指摘する。

 実際、韓国の情報機関、国家情報院は4日、非公開の国会情報委員会で、北朝鮮が建国記念日(9月9日)や朝鮮労働党創建記念日(10月10日)に合わせ「ICBMを通常角度で発射する可能性がある」と報告、再び日本上空を通過する形でミサイルを発射する恐れがあるとの分析を示した。聯合ニュースが報じた。

 ICBM、核実験、そしてEMP。トランプ大統領を交渉へと振り向かせるために、正恩氏の“脅迫”はエスカレートしている。そこには米国だけでなく、北朝鮮内の引き締めもあるようだ。

 平壌情勢に詳しい関係者は「昨年、朝鮮人民軍のエリート幹部や外交官などが次々と韓国に亡命するなど、金正恩体制はほころびかけている。ミサイル発射や核実験は、正恩氏の実績を国内に示すためのプロパガンダ。正恩氏の本音は『核兵器の力と軍の思想教育を強化すれば、軍人は高い緊張感が保てる』という単純な思考だ」と分析する。

 だが、続けて「インターネットのこの時代、兵士や市民に外部からの情報が入る中で、正恩氏が国内を統治できていない見方が出ている」とも。
 正恩氏としては脱北するなど緩んでいる軍人の緊張感を高めるためと信じているようで、今後も弾道ミサイル発射や核実験を強行してくるのは間違いなさそうだ。

 だが、忍耐強いとはとても思えないトランプ大統領が、ここまでやられて何もしないではいられないはず。特殊部隊を北朝鮮に派遣し、正恩氏と軍や党幹部をピンポイントで殺害する“キル・チェーン作戦”(標的の特定→派兵→攻撃→破壊という一連の構造のこと)へゴーサインを出すのは秒読み段階に入ったといえそうだ。