独立行政法人「海技教育機構」(横浜市)の練習船「青雲丸」で、7月から3人の男子実習生が立て続けに自殺や自殺未遂を図っていた件で、石井啓一国土交通相(59)は1日の記者会見で「立て続けに起きたことを重く受け止めている」と述べ、原因究明を徹底するよう指示した。

 3人は機構が運営する海技大学校の2年生。同船での実習は7~9月で、100人以上が乗船していた。最初の“犠牲者”は19歳の実習生。7月13日、香川県の小豆島沖に停泊中、船から海に飛び込み自殺を図った。救出されたが「船に乗るのが嫌になった。船員の仕事が不安だった」と説明しているという。

 その数日後、今度は別の実習生(20)が神戸港で下船後、音信不通に。同28日、名古屋市内で自殺しているのが見つかった。進路について悩んでいる様子だったという。

 同30日には、名古屋港で自由時間に下船した実習生(21)が、家族らに「失踪する。このまま船の道に進みたくない」などとメールを残し、行方不明に。ただし、8月には本人名義で携帯電話が新規契約されていた。

「海技教育機構」の別の練習船では2014年に実習生の自殺未遂、昨年も自殺者が出ている。ネット上では上官によるパワハラか?とも噂されているが…。

 青雲丸の実習生とおぼしき人物はツイッターで「青雲丸、乗船中の自分言っていいすか? 今クソ緩いっすよ」「教官はいい人多い」と証言。機構側も「いじめやパワハラの類いは確認できなかった」としている。

 となると、原因は? 臨床心理士の矢幡洋氏は「常に緊張感のある実習現場はストレスも大きい。加えて航海中は携帯電話の電波も届かず、外は真っ暗。世間と隔離された環境に3人が不安障害に陥ってしまったのかもしれない。最初の自殺未遂がトリガーとなり、同じ不安を抱えていた人が自分も逃げていいんだ、自殺を考えてもおかしくないんだと思い、行動に移した可能性が高い。自殺(自殺未遂)は連鎖するんです」と話す。

 青雲丸は8月31日に小樽に寄港。4日に横浜港に向け出航する。