マカオ台風被害救援に人民軍投入 市民掌握図る中国政府の狙い

2017年08月31日 17時00分

マカオの街中のゴミを片付ける中国人民解放軍の兵士ら(ロイター)

 8月23、27日に華南デルタを2つの台風が立て続けに襲い、マカオに甚大な被害の爪痕を残した。現在も復旧作業が進められているが、団体旅行客の受け入れは9月2日からになる予定だ。

 最終的な被害状況はいまだ不明だが、マカオでは10人の死者が確認されている。また、世界最大の人口密度といわれる同地では、地下駐車場や地下通路がいたるところに設けられており、浸水したところでは今なお行方不明者の捜索が続けられている。

 1997年、ポルトガルからの返還以降、最悪の災害に見舞われたマカオでは、中国への帰属意識が高まっているという。現地入りしたフリーライターの吉井透氏はこう話す。

「マカオの自前の消防などでは手に負えないため、中国の人民解放軍ががれきの撤去などの救援活動を行っています。解放軍がマカオの街中で活動するのは、ポルトガルからの返還以来初めて。2014年に“雨傘運動”が巻き起こった香港同様、反中央の機運もくすぶるマカオですが、炎天下に泥まみれで働く兵士たちの姿を目の当たりにし、ありがたいと感じる市民は少なくなかったようです。住宅地では民家の軒先に五星紅旗が掲げられているのを目にします。マカオの若者たちの間では、ツイッターやフェイスブックに『多謝中央(ありがとう中央政府)』と表明するのが、にわかに流行しています」

 香港と同じく「一国二制度」下にあり、特別行政区として「高度な自治」が認められているマカオだが、人民解放軍が常駐している。ただし、その任務は国防に限られており、返還以来、駐屯地から出て活動したことはなかった。その一方で、人民解放軍の展開に危機感を募らす人々もいる。

「民主派活動を行っている学生は『解放軍に公安や情報機関の工作員を紛れ込ませ、救援工作のふりをして我々のような活動家の個人情報を収集している。その証拠に被害が軽微だったにもかかわらず、兵士の姿が見られるエリアもある』と話していました」(吉井氏)

 台風被害に乗じて特別行政区のガバナンス強化を図ろうとは、まったく抜け目ない。