北朝鮮が米国領グアム周辺へのミサイル発射計画にとどまらず、米国本土への攻撃態勢を整えている可能性も一部で報じられた。トランプ米大統領(71)が激しく応酬するなど米朝間の緊張が高まっている。金正恩朝鮮労働党委員長は強気の姿勢を崩さないが、今秋にも白旗を掲げざるを得ない状況に陥る可能性が出てきた。

 米朝間の挑発合戦が止まらない中、カギを握るのが中国だ。国連安全保障理事会は5日にICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射を2度繰り返した北朝鮮に対し、石炭や鉄鉱石、海産物の輸出を全面的に禁止する制裁強化の決議を全会一致で採択した。

 北朝鮮とパイプが太い中国とロシアは当初、慎重だったが、賛成に回った。金委員長の統治資金を管理する朝鮮労働党39号室の元幹部である李正浩氏は、共同通信に対して「(決議は)非常に強力だ。過去の制裁と次元が違う」と説明する。

 北朝鮮は規制で最大、年間計約17億ドル(約1800億円)を失う計算になる。北朝鮮は鉱山など輸出で稼いだ外貨で設備投資や労働者への食料を調達しているが、制裁で多くの製鉄所などが操業困難に陥るという。

 北朝鮮の最大の輸出先である中国が制裁を厳格に履行するかどうかが明暗を分けるが、中国の習近平国家主席(64)は、もっと大きなプランを持っているという。

 中国では5年に1度開かれる共産党大会が今秋(10月もしくは11月)に控える。指導体制の強化を図りたい習氏は、“更迭人事”を断行するとみられているのだ。

 拓殖大学客員研究員で元韓国国防省北朝鮮分析官の高永チョル氏は「習近平主席を支える高官のうち、3人が江沢民元主席の派閥。親北朝鮮派といわれている。習氏がタカ派的に北朝鮮政策に出ても反対したり、足を引っ張ったりしてきた。この3人が今度の党大会で更迭される可能性が高い」と指摘する。

 親北朝鮮派が駆逐されれば、中国は北朝鮮への制裁履行に支障がなくなる。国連安保理で制裁に盛り込めなかった中国から北朝鮮への石油輸出禁止の追加措置に出る可能性もあるという。

「江沢民の派閥は石油財閥でもあり、北朝鮮への石油輸出を止めたくない。しかしクビとなれば、石油のパイプラインは止まる。北朝鮮は2週間で経済が崩壊し、米国や中国に頭を下げるしかなくなるでしょう」(高氏)

 トランプ大統領は12日、習氏と電話会談し、輸出禁止制裁の履行徹底を要求した。14日には、不公正な商慣行が横行している中国の知的財産権侵害の調査を米通商代表部に指示する大統領令に署名する。

 中国では不公正な商慣行が横行しており、トランプ大統領は制裁をちらつかせることで、中国側に北朝鮮への対応を強めるようプレッシャーをかける狙いがある。兵糧攻め作戦が実現すれば、金正恩委員長はひとたまりもないはずだが…。