北朝鮮が米領グアムへ向け、中距離弾道ミサイル「火星12」を発射する計画を表明し、アメリカと北朝鮮間の挑発合戦が止まらない中、日本政府は11日、国内へのミサイル落下に備え、航空自衛隊の地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を中国、四国地方に展開することを決めた。もしもの時に対応できるのか?

 北朝鮮はグアム周辺に4発同時にミサイルを発射する計画を公開し、具体的な飛行ルートも明かした。日本では島根、広島、高知の3県上空を通過すると名指ししたことで、防衛省では陸上自衛隊駐屯地の出雲(島根県出雲市)、海田市(広島県海田町)、松山(愛媛県松山市南梅本町)、高知(高知県香南市)にPAC3部隊を白山(三重県津市)と饗庭野(滋賀県高島市)の両分屯基地から移動させ、11日夜から順次展開した。

 日本のミサイル防衛は2段構えで、イージス艦搭載の海上配備型迎撃ミサイル(SM3)で破壊し、撃ち漏らした場合、PAC3で対応する。

 今回の事態ではグアムを目指して飛んだミサイルが、途中で不具合を起こして落下するなどした場合に、PAC3部隊で迎撃する。ただSM3が射程500キロなのに対し、PAC3は射程20キロしかなく、それぞれ配備された基地上空にミサイルが飛んでこない限りは迎撃できない。基地から数十キロ離れた場所は、手も足も出ないのが現状だ。

 政府・与党、軍事関係者の間で、日本のミサイル防衛は穴だらけと指摘され、一刻も早い強化の必要性が叫ばれている。「イージス・アショア」といわれる地上配備型のミサイル防衛システムの導入が検討され、日米共同開発中の迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」は射程1000キロ、高度500キロで、少ない数で日本全土をカバーできるとされる。ただ、その新型迎撃ミサイルも6月に米ハワイでの米軍による実験は失敗に終わっている。ミサイルを撃ち落とすのは簡単ではない。