作業員自殺「新国立競技場」建設現場の闇 “隠蔽体質”に批判の声

2017年07月21日 17時00分

建設の進む新国立競技場(ロイター)

 これも隠蔽なのか!? 喜ばしいはずの2020年東京五輪・パラリンピックの陰で悲劇が起きていた。新国立競技場の工事現場で働く男性会社員(23=当時)が、今年3月に自殺していたことが20日、明らかになったのだ。この会社員は2月の時間外労働が200時間以上に及んでいたという。遺族は過重労働が原因として労災を申請している。この件は、大会組織委員会など関係団体から発表されておらず“隠蔽疑惑”も浮上。世界中から猛批判を浴びる可能性もある。

 この男性は、競技場の地盤改良工事に携わっており、主に、現場作業員たちの安全管理や材料の品質管理を担当していた。3月2日に突然失跡、4月15日に長野県内で遺体で発見された。遺体のそばには遺書があったため、警察は「自殺」と判断した。

 男性は、新国立競技場の建設を請け負う大成建設から工事を受注する会社に昨年4月に入社。新国立建設に携われることで、希望に胸を膨らませていたに違いない。

 その新国立は競技場のデザイン案が一昨年に白紙撤回されたことで、着工は当初予定より1年あまり遅れて昨年12月にズレ込み、急ピッチの作業に追われることに。その影響により、この男性の今年1月の時間外労働は約143時間、自殺直前の2月には約211時間にも及んだという。1日の睡眠時間が2~3時間で、徹夜もあったとの一部報道もある。

 現場で年上の作業員たち相手に仕事をするだけでも重圧がのしかかっていたはず。加えて、長い勤務時間に睡眠不足では心身ともに疲弊していたことは容易に想像できる。

 20日に会見した代理人弁護士は「工期の遅れを取り戻そうと長時間労働を余儀なくされた。(男性の)労働実態は、人間の生理的限界をはるかに超えた常軌を逸した時間外労働だった」と批判した。男性の遺書には「身も心も限界な私はこのような結果しか思い浮かびませんでした」とつづられていたという。

 男性の両親は、自殺の原因は過酷な業務にあったとして、12日に上野労働基準監督署に労災申請した。

 だが、この日まで大会組織委員会や大成建設、競技場を管轄する日本スポーツ振興センター(JSC)から男性の件は公表されていない。ある五輪関係者は「組織委員会は純粋に知らなかったんだと思う。JSCには5月の段階で報告が上がっていたが、事実確認をしていたらしい。ただ、こういう案件があったら、すぐに公表すべき。隠蔽していたと言われても仕方がないのでは?」と指摘する。

 実際、先月行われた定例ブリーフィングで、大成建設の関係者は「工事の安全、労働環境に考慮しながら作業している。作業員はこの事業に携わる喜びや誇りを持っている」と語り、この件に触れることはなかった。

 さらに前出の五輪関係者はこう懸念する。

「こんな奴隷のような労働を強いていたのでは、世界中から東京五輪が批判されるかもしれない。そうなれば、オリンピック・ムーブメントどころではない」

 大成建設は本紙の取材に「お亡くなりになられた故人のご冥福をお祈りするとともに、元請けとして専門工事業者に対し、今後も労働法令を含む法令順守の徹底について指導してまいります」とコメント。

 また、JSCも「従業員の方がお亡くなりになったことについて心よりお悔やみ申し上げる次第です。法令順守の徹底について要請してきているところであり、改めて周知徹底を図っているところであります」(一部略)とした。

 24日には、五輪開幕3年前イベントが東京都庁で大々的に開催される。大会の機運を高める節目の時期に、五輪の“ブラック体質”があぶり出された格好だ。