東武鉄道が8月10日から運行するSL「大樹」の試運転が19日、報道陣に公開された。

 大樹に使用されるC―11型蒸気機関車はJR北海道から借り受けたもの。客車はJR四国から譲り受け、新製当時の姿に近づけるよう手を入れた。下今市駅と鬼怒川温泉駅に設置された転車台は、山口県長門市と広島県三次市で保存されていたものをJR西日本から譲渡された。

 運行初日の3往復分の乗車券は発売から数分で完売。順調な滑り出しを見せているが、昨年8月、C―11の北海道からの輸送時には、台風の影響で大幅に輸送ルートを変更するアクシデントに見舞われていた。

「輸送時にはボイラー部分と運転席部分を分割。さらに部品を分けて運びました。本体部分は苫小牧から大洗(茨城)まで予定通りに到着しましたが、部品を乗せたトラックは、予定していた苫小牧からのフェリーが台風の影響で欠航。急きょ小樽から新潟までのフェリーに変更したんです」(東武鉄道広報担当者)。文字通り荒波にもまれる船出になっていた。

 JR西から譲られた転車台の一つは、鬼怒川温泉駅の駅前広場に設置された。転車台は普通、車両基地などの奥まった場所にあり、駅前に設置する例は他にない。すぐ近くでSLの方向転換が見られることから、この日も人だかりができ、早くも人気スポットと化していた。

 バブル崩壊以降の不景気の影響で、鬼怒川温泉は“廃虚・廃旅館がすごい”としばしば話題になった。今回のプロジェクトは地域の活性化も目的のひとつ。SLや駅前の転車台は、鬼怒川温泉に人を呼ぶきっかけになりそうだ。

 ところで、SLなどの人気車両が運行されると、よくあるのが一部のアマチュアカメラマンによる線路立ち入りや私有地立ち入りによるトラブル。前出の広報担当者によれば、SLの運行に合わせて線路際に新たな柵を設置。立ち入りについてはホームページでしないように呼びかけるほか、運行日には警備員と社員による巡回を行うといい、すでに試運転段階から実行している。

 トラブル防止策については、以前からSLを運行し、乗務員養成の協力を仰いだ真岡鉄道や大井川鉄道のノウハウを参考にしたという。