「小さな殺人鬼」ヒアリの破壊力は怪獣クラス

2017年07月06日 08時00分

 横浜、東京に現れるのも時間の問題か!? 強い毒を持つ南米原産の「ヒアリ」が大阪南港(大阪市住之江区)で新たに確認された問題で、環境省は4日、付近で駆除したヒアリから、女王アリ1匹を確認したと明らかにした。卵は見つかっていないが、周辺で繁殖している可能性がある。女王アリが国内で確認されるのは初めて。“殺人アリ”と呼ばれるように毒性ばかりが注目されるが、米国ではインフラ破壊も問題になっている。

 環境省によると、6月29日に住之江区内の倉庫に中国・香港から搬入されたコンテナで、毒を持つ別の外来種「アカカミアリ」が確認され、同30日に周辺を調査した結果、アスファルトの亀裂にヒアリがまとまった状態で見つかった。

 殺虫剤などで駆除し、約10匹の死骸を回収した上、7月3日に女王アリとみられる1匹を含む死骸約50匹を回収。生きたヒアリは捕獲されていない。
 ヒアリは体長約2・5~6ミリ。女王ヒアリは体長や腹部が大きかった。

 ヒアリは5月下旬に兵庫県尼崎市に運ばれたコンテナから初めて見つかり、神戸港(神戸市)と名古屋港(愛知県弥富市)でも確認された。いずれも中国・広州市からのコンテナで、環境省は大阪港のヒアリとの関連を調べる。外国の貨物取扱量が大阪港の10倍ある東京港にもヒアリが入っていないわけはないだろう。

 女王アリがいたとなれば、既に繁殖している恐れもある。専門家は「初期段階での侵入阻止が重要だ。定着すると駆除は極めて難しい」と危機感を募らせた。

 アリの生態に詳しい京都大昆虫生態学研究室の土畑重人助教(35)によると、女王アリは1日に1000個以上の卵を産む能力があるとされ、いったん巣を作ると、急激に繁殖する恐れがある。物流の多い港から侵入するケースが多く、関東地方以南の気候が適しているため、いよいよ東京や横浜でも見つかることが考えられるという。

 女王ヒアリは一つの巣に1匹のタイプと複数のタイプがあり、複数の場合、繁殖力は特に強い。いずれも米国や中国、台湾で確認されており、土畑氏は「日本国内に、いつ侵入してもおかしくなかった」と指摘する。

 水際で阻止するため、湾岸部を中心とした調査と駆除を強調するが、「物流に紛れて押し寄せてくるため、完全な阻止は難しい。特効薬はなく、地道に駆除するしかない」(土畑氏)。

 米国では年間8万人が被害に遭い、200人近くの死者が出ており「小さな殺人鬼」とまで言われる。駆除費用や被害者の治療などのため、年間5000億~6000億円の経済的損失が出ているという。

 米国の報道では、女王アリの寿命は7年で、1日1600個の卵を産み、1つの巣に最大25万匹以上の働きアリがいるとされている。まだ処女の女王アリには羽があり、風に乗って10キロ以上も移動し、巣を作る際に羽を落とす。本来の生息地である南米にいたときは一つの巣に女王アリは1匹だったというが、米国での駆除薬への耐性のためか、複数女王制に“進化”したという報道もある。

 その恐ろしさは人間を“毒殺”するだけではない。米国事情通は「農場、畑、公園、ゴルフ場などでは目に見えるアリ塚を作ります。しかし、アメリカで問題になっているのは、コンクリートの下、建築物の下など見えないところに巣を作るケースです。湿気を好むので、高速道路のひび割れなどから、湿った土部分に入り込み、コンクリートの下で巨大な巣を作り、道路を陥没させるのです。家や工場の下で増え、建物が崩落するケースも」と説明する。

 殺人だけではなく、道路や建物まで破壊するというから、“小さな怪獣”でもある。

 天敵がいないため増え放題。アリ塚を作るだけなら発見しやすいが、実際はコンクリートや木材、岩石、レンガの下の土壌に巣を作るケースが多いというから、間違いなく人類の敵だ。