奄美大島の奄美空港(鹿児島県)で先月5日、下半身に障害のある木島英登さん(44)が格安航空会社(LCC)バニラ・エアに搭乗する際、階段式タラップを這い上がった問題で、石井啓一国交相は30日、閣議後の会見で「(バニラに対し)サービスのあり方について検証するよう指導している」と話した。

 木島さんは、同行者に自前の車いすごと担いでもらっての搭乗・降機はダメという「よく分からない規則」を盾にされ、やむなく「勝手に上がった」という。国交省など関係各所にクレームが行き、バニラ側も即対応。バニラの国内・国際運航路線で唯一、車いすでの昇降設備がなかった奄美空港で、14日から座椅子型担架、29日から電動式階段昇降機を導入した。

 車いすで100か国以上旅している木島さんはかねて、一部航空会社の搭乗拒否問題を訴えていた。体を張った行動が今回、航空会社を動かした格好だ。

 ちなみにバニラは先月18日、成田空港で香港からの到着客をバスで国内線到着口へ誤誘導、入国審査を通さず10人を入国させてしまい、国交省から厳重注意を受けたばかりだった。

 LCCはチケット代が安い分、サービスも悪いと思われがちだが、障害者の母親(80)とバニラやジェットスターで沖縄と香港へ旅行したことのある男性(48)は「LCCだしスタッフには期待してなかったが、対応はむしろよかった」と指摘する。

「普段車いすを使ってるわけじゃないが、両ヒザに人工関節を入れていて歩くのがすごく遅く、しかも危なっかしい。そんな母に、事前リクエストしたら飛行機に乗る前と降りてから車いすを用意してくれたし、タラップの上り下りで手を貸してくれたり…。あと、追加の座席指定料金を払ってないのに座席を隣にしてくれて、なるべくトイレに近い席に配慮してくれた」

 木島さんは「“障害者はLCCに乗るな”という意見がまかり通ってしまう」と危惧するが、今回の騒動が大々的に報じられたことで、LCC業界には抑止力となったはずだ。