先月6日から6月17日に東京・六本木のギャラリーで開催された「ブラックボックス展」(延べ入場者数3万人)で痴漢被害を訴える声が相次いだ問題で、運営責任者のヴァーチャル・アーティストなかのひとよ氏が21日、「予期せぬ来場者による行為があった」と公式サイトで謝罪した。

 同展は非常灯もない5メートル四方の真っ暗闇を体感するというコンセプト。この暗がりで女性客が男から抱きつかれたりキスされるといった痴漢被害が続々と報告されているのだ。まさに「顔が見えなきゃ何でもアリのネット世界の象徴」ともやゆされている

 来場者にはイベント期間終了まで展示内容について口外、発信を禁じる誓約書にサインさせていたが「同展を絶賛、酷評する目的で“嘘の展示内容”を(ネット上に)投稿することを許可する」との断りが付いていた。実はこの巧妙なただし書きが被害発覚を遅らせた。

 ネタバレを禁じた誓約通り、イベント終了に合わせて痴漢被害が報告され始めたことに疑問の声も上がっているが、被害女性の一人はツイッターで「『あれは会期中の投稿だから嘘だよ』と疑われるのも嫌だ」と、ただし書きがネックになり告発を待ったとしている。

 ITジャーナリストの井上トシユキ氏は「同展はネット世界で“炎上慣れ”した人物によって、うまくエクスキューズが用意されている。主催側が痴漢まで想定していたかは分からないが、暗闇を歩かせるだけの展示内容に『詐欺だ』『金返せ』などと炎上する可能性もあり、拡散すれば集客できなくなる。誓約書を書かせることで炎上を封じたのだろう」と指摘。

 また、同展は会場入り口に立つ門番によって入場者が選別された。

「『女性ばかり入場させていた』という声も上がっているが、選別基準を公開していない以上、運営が痴漢にかかわっていると邪推されても仕方がない」と井上氏。

 被害者らは警視庁に被害届を出しており、問題だらけのブラックボックスに今後、捜査のメスが入りそうだ。